半導体メーカーが多数出展していた今年の「カーエレ展/EV・HEV展」。各社の展示から筆者が特に気になったものと、注目の蓄電デバイスである電気二重層キャパシタの展示を紹介する。
「第4回国際カーエレクトロニクス技術展(カーエレ展)/第3回EV・HEV駆動システム技術展(EV・HEV展)」(2012年1月18〜20日、東京ビッグサイト)では、昨年を上回る数の半導体メーカーが出展した。大手だけでも、ルネサス エレクトロニクス、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン、STマイクロエレクトロニクス、インフィニオン テクノロジーズ ジャパン、リニアテクノロジー、富士電機、インターシルなどを挙げることができる。ティア1サプライヤとして知られるボッシュも、車載半導体の事業部門が単体で参加していた。
インフィニオンは、自社の車載ICを使って試作した電動バイクを展示した。1.2kWのモーターを搭載している。二次電池はリチウムイオン電池で、満充電から最大90kmの走行が可能である。リチウムイオン電池モジュールの各電池セルの充電状態を効率良く制御する「アクティブセルバランス」技術を実用化するための実験車両だ。ペダルも備えているので、電動アシスト二輪車の実験車両としても使える。
ルネサスは、シングルコアマイコンを、ハードウェアベースで仮想的にマルチコアとして利用する技術を紹介した。この技術は、1クロック単位の粒度で、マルチコアの各仮想コアに割り当てた処理スレッドを切り替えられる。切り替え時のオーバーヘッドが無いので、マルチコア化した場合でもプロセッサコアの処理能力が無駄にならない。仮想コアの処理スレッドが利用できるタイムスロットの数を増減すれば、各コアの処理能力を変更できる。「次世代の32ビットRISCマイコンの発表時には利用できるようにしたい」(同社)という。
展示では、FPGAに実装した1個のプロセッサコア(48MHz動作)を、4個の仮想コアに分割して動作させるデモを見せた。鉄道模型を4台走らせ、各模型の走行速度を各仮想コアの処理能力に応じて設定するデモである。タイムスロットの割り当て数が多く、処理能力が高いコアに対応する模型ほど高速に走行する。
ボッシュは、電動スクータの走行モーター制御用パワーモジュールの次世代品を展示した。同社は2011年7月から、電動スクータの需要が急拡大している中国市場向けに、走行モーターの制御機能を持つECU(電子制御ユニット)の第1世代品を量産している。展示したパワーモジュールは、個別部品で構成されている同ECUのモーター制御機能を1パッケージに集積している。モーター制御機能の実装面積を、個別部品で構成する場合と比べて大幅に削減できる。
インターシルは、マルチフェーズ昇圧電源コントローラIC「ISL78220/ISL78225」を用いたH級オーディオアンプのデモを行った。通常のオーディオシステムの電源回路は、オーディオ信号の大きさとは関係なく、一定の電圧でアンプ回路に電力を供給する。このため、オーディオ信号が小さいときには電力損失が発生する。ISL78220/ISL78225を電源回路に用いれば、オーディオ信号レベルに合わせて電圧を変動させながら電力を供給できる。「電力損失は熱として放出されるので、一般的なオーディオアンプはヒートシンクなどの冷却部品が必要になる。ISL78220/ISL78225であれば、電力損失が低減できるので、放出する熱の量が少なく、冷却部品が不要になる。設置スペースが限られるカーオーディオに最適だ」(同社)という。
富士電機は、個別部品タイプの車載用パワーMOSFETとIGBTを拡充する方針を明らかにした。パワーMOSFETについては、微細化によってオン抵抗を低減したトレンチタイプの次世代品を2012年度半ばに投入する。これまで電流容量の上限は70Aだったが、次世代品は100Aまで向上できている。また、トレンチタイプよりもさらに低オン抵抗のSJ(Super Junction)構造のパワーMOSFET(関連記事)についても車載グレード品を開発中である。IGBTは、高速FWD(Free Wheeling Diode)を搭載する「High Speed Vシリーズ」の投入を計画している。イグナイタ(エンジン点火装置)向けにエネルギー耐量の大きい品種も開発中だ。
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