メディア

グラフェンから半導体誘電体、米大学が発見材料技術 グラフェン

シリコンよりも高い電子移動度を持つ素材として注目されているグラフェン。グラフェンから半導体誘導体を生成することにした米大学の研究チームは、「炭素系材料を用いたナノエレクトロニクスに革新をもたらす」と期待している。

» 2012年04月20日 10時34分 公開
[Peter Clarke,EE Times]

 米ウィスコンシン大学ミルウォーキー校(UWM:University of Wisconsion-Milwaukee)の研究チームは、グラフェンから生成可能な半導体を発見したと発表した。

 グラフェンとは、炭素原子が六角形の「ハニカム(蜂の巣) 格子」を形成したシート状の炭素材料である。Si(シリコン)トランジスタで使われている材料よりも電子移動度が高いことから、エレクトロニクス業界が先端材料として注目している。しかし、グラフェンおよびグラフェン誘導体はこれまで、導体もしくは絶縁体としてしか利用されてこなかった。

 UWMの研究チームは今回、グラフェン特有の六角形の炭素環構造に酸素原子が含まれる誘導体「GMO(Graphene Monoxide)」を生成することに成功した。同チームは、この半導体誘導体が今後、炭素系材料を用いたナノスケールエレクトロニクスの時代を大きく後押しするとみて期待している。

GMOの原子構造 GMOの原子構造を掲げる研究者 物理学の教授を務めるMichael Weinert氏と、工学部の院生Haihui Pu氏である。写真:Alan Magayne-Roshak氏

 同研究チームは、酸化スズナノ粒子をカーボンナノチューブ(CNT)に添加したハイブリッドナノ材料を、センサーとして利用するために、同材料の性質について研究を行っていた。その研究の最中に、このGMOを発見したという。

 UWMの教授であるJunhong Chen氏とMarija Gajdardziska氏、Carol Hirschmugl氏は、顕微鏡検査技術を用いることにより、炭素の表面を分析して、グラフェン酸化物(GO:Graphene Oxide)の多層絶縁体からグラフェンを人工的に合成するという共同研究に取り組んだ。

 しかし、研究チームが行ったある実験の中で、GOを真空中で加熱して酸素を除去しようとしたところ、GOの層が整列してGMOを形成することが明らかになった。そこで、温度を変化させると酸素含有量も変わるという性質を利用して、4種類の材料を生成した。同チームは、これらを全てGMOと呼んでいる。

 研究チームは引き続き、材料の構造安定性を高めたり、生成規模を容易に拡大したりするための手法を確立すべく、研究に取り組んでいくという。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.