日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)が、「人とくるまのテクノロジー展2012」において、アクティブセルバランス技術を初公開した。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の電池パックの実効的な容量や寿命を向上可能な次世代技術である。
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は、「人とくるまのテクノロジー展2012」(2012年5月23〜25日、パシフィコ横浜)において、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の電池パックの実効的な容量や寿命を改善できるアクティブセルバランス技術を公開した。
一般にEVやHEVが搭載する電池パックは、数百の単位セルをスタックして内蔵しており、各セルの容量は大小ばらついている。充放電の際にその容量ばらつきの影響を抑えるのがセルバランス技術だ。セルバランス技術には、比較的容易に実装できるパッシブ方式と、実装の難易度の高いアクティブ方式があって、現在のEVやHEVではパッシブ方式が使われている。
ただ、パッシブ方式には課題が多い。パッシブ方式では、容量が小さい電池セルが満充電になった後も、容量の大きい残りのセルが満充電になるまで充電を続けられるように、容量の小さいセルへの充電電流を抵抗器を介して熱として捨てている。また、電池パックから負荷回路に電力を供給する放電時には、先に放電を終える容量の小さいセルが過放電にならないように、容量の大きいセルに電力がまだ残っている状態で放電を停止するように制御している。結果としてパッシブ方式では、電池パックの充電効率や実効的な容量は、容量の小さいセルが基準になって決まってしまう。
一方、アクティブ方式は、パッシブ方式で熱として捨てていた容量の小さいセルへの充電電流を、満充電に達していない残りのセルの充電に使うことができる。放電時も、容量が小さいセルに他のセルから電力を移せるので、電池パック全体で見たときにある程度の電力がセルに残ったままになってしまうパッシブ方式とは異なり、電力を最後まで使い切ることが可能だ。つまり、パッシブ方式の代わりにアクティブ方式を採用すれば、電池パックの実効的な容量を高められる。
また、パッシブ方式の場合は、充放電時の電気化学的な負荷が容量の小さいセルに集中するので、そうしたセルの寿命によって電池パック全体の寿命が決まってしまう。アクティブ方式を使えば、容量の小さいセルに電気化学的な負荷が集中することはない。従って、電池パックの寿命を伸ばすことも可能になる。
今回日本TIが展示したのは、旧National Semiconductor(Texas Instrumentsが2011年9月に買収を完了)が開発していたアクティブセルバランス技術の評価ボードである。リチウムイオン電池パックに向けたもので、1枚の評価ボードで14個のセルのバランス制御に対応できる。アクティブセルバランスを行うには、コンデンサやトランスなどの外付け部品が必要になるが、この評価ボードには2個のトランスが搭載されていた。「セルバランスを行うための回路を集積したICは開発中。この評価ボードでは、複数のICを使ってセルバランス回路を構成している」(日本TI)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.