43.5%を達成したセルでは、トップ層にInGaP(インジウムガリウムリン)を用いた。ミドル層はGaAs(ガリウムヒ素)、ボトム層はInGaAs(インジウムガリウムヒ素)だ。GaAs(ガリウムヒ素)基板上にトップ層、ミドル層、ボトム層の順に形成し、その後GaAs基板を除去し、Si支持基板上にボトム層を下にして載せ替える逆積み形成法を用いて製造したもの(図4)。
図4 今回のセルの層構造 トップ層(空色)とミドル層(薄緑)、ボトム層(ピンク)の他に、層間を接続するトンネル接合層(黄色)や結晶の格子定数を調整するバッファ層(白)、下部電極(濃い灰色)、支持基板(薄い灰色)、上部電極(灰色の棒)が見て取れる。出典:シャープなお、同社は、2009年10月に化合物3接合太陽電池で35.8%(非集光)、2011年11月に36.9%(非集光)を達成していた。35.8%のセルは、InGaP、InGaAs、Ge(ゲルマニウム)という、今回とは異なるセル構造であり、36.9%のセルは今回と同じセル構造を採っていた。集光時の変換効率については、2010年5月に42.1%(レンズを用いて230倍に集光した場合。非集光時は35.8%)という記録を達成していた。
今回の研究成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「革新的太陽光発電技術研究開発」プロジェクトの一環として取り組んだ成果である(図5)。
図5 NEDOの太陽電池ロードマップ NEDOは、太陽電池の種類ごとにロードマップを策定している。図に示したのは、特に高い変換効率を狙う研究に関するもの。図下にはシャープの手法が示されている。中央が今回43.5%を達成したセルの構造。2014年の目標(45%)まであと1.5ポイントである。出典:シャープシャープが開発した太陽電池は4mm角と小型だ。どうやって利用するのだろうか。利用イメージを図6に示した。図右にあるようにセルの上部にフレネルレンズを配置して太陽光を集中させ、このような「箱」を図左のような架台に並べてモジュール化する。
図では地上設置例を示しているが、同社は宇宙用途も狙う。例えば、2005年にはシャープの化合物3接合型太陽電池を搭載したオーロラ観測用の小型科学衛星「れいめい」が打ち上げられている。2009年には同じく温室効果ガス観測衛星の「いぶき」が続いた。
太陽電池の世界記録を更新、集光型用でセル変換効率43.5%を達成
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