理化学研究所と東京大学は、光の照射によって相移転を起こす強相関電子系酸化物と半導体を接合した太陽電池を試作するとともに、その接合界面の近いところで相競合状態を誘起することに成功し、磁場によって太陽電池の光電変換効率を向上させることが可能であることを発見した。
理化学研究所と東京大学は2014年8月、光の照射によって相移転を起こす強相関電子系酸化物と半導体を接合した太陽電池を試作するとともに、その接合界面の近いところで相競合状態を誘起することに成功し、磁場によって太陽電池の光電変換効率を向上させることが可能であることを発見したと発表した。
共同研究グループは、光照射で相移転を起こす物質である「ペロブスカイト型マンガン酸化物」と半導体を接合した太陽電池を試作した。接合部は格子ひずみや化学組成が異なる数種類の組み合わせで作成し、磁場中で太陽電池の特性を測定した。ペロブスカイト型マンガン酸化物は、格子ひずみや化学組成を変えることでバンド幅を変化させることができる。バンド幅が広いときは金属、狭い時は電荷整列絶縁体となる特性を応用した。
今回の研究では、バンド幅が広く金属相の[La0.7Sr0.3MnO3(LSMO)]と、バンド幅が中間で、金属相と絶縁体相が拮抗している[Pr0.55(Ca0.7Sr0.3)0.45MnO3(PCSMO)]と、組成が異なる2つのペロブスカイト型マンガン酸化物を比較した。また、格子ひずみの影響を検証するため、結晶面の異なる2種類のヘテロ接合も作成した。
この結果、格子が界面に平行な面内で異方性にひずみ、組成がLSMOのペロブスカイト型マンガン酸化物を用いた接合では、磁場によって光電変換効率が大きく向上することが分かった。このことは、接合界面に相競合状態が誘起されていることを示しているという。さらに、磁場依存性を示す接合では、LSMO(110)接合で大きな短絡電流密度を観測した。これにより、接合界面近くで光照射による相移転が発生し、多重キャリア生成によって光電流が増幅されているとみられている。
この研究は、理研創発物性化学研究センター強相関面研究グループのグループディレクタ(東京大学大学院工学系研究科教授)を務める川崎雅司氏、盛志高研究員、中村優男上級研究員、牧野哲征研究員および、強相関理論研究グループの小椎八重航上級研究員らの共同研究グループによる成果である。
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