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発電効率はアモルファスシリコンの2倍以上、リコーが完全固体型色素増感太陽電池を開発エネルギー技術 太陽電池

リコーは、電解質を固体材料のみで構成した色素増感太陽電池の開発に成功した。液体の電解質を用いた従来技術で課題となっていた安全性や耐久性を改善しつつ、発電効率はアモルファスシリコン太陽電池の2倍以上を達成した。環境発電(エネルギーハーベスト)用素子として、ネットワークセンサーなどの自立型電源用途に向ける。

» 2014年06月16日 14時50分 公開
[EE Times Japan]

 リコーは2014年6月、電解質を固体材料のみで構成した色素増感太陽電池の開発に成功したと発表した。液体の電解質を用いた従来技術で課題となっていた安全性や耐久性を改善しつつ、発電効率はアモルファスシリコン太陽電池の2倍以上を達成した。環境発電(エネルギーハーベスト)用素子として、ネットワークセンサーなどの自立型電源用途に向ける。

 新開発の色素増感太陽電池は、有機p型半導体と固体添加剤からなるホール輸送性材料を用い、独自の超臨界流体二酸化炭素(SCF-CO2)を使って製膜しているのが特長だ。この製膜技術により、これまで困難であったナノレベルの酸化チタン粒子の多孔質膜内部へ、極めて高密度にホール輸送性材料を充填することが可能となった。電解質を固体材料のみで構成しているため、液体の電解質を用いていた従来の色素増感太陽電池に比べて、液漏れなどのリスクをなくすことができる。

完全固体型色素増感太陽電池の構造イメージ図(左)と、超臨界充填法により、従来工法に比べてはるかに高密度に充填された固体電解質の電子顕微鏡写真 (クリックで拡大) 出典:リコー

 固体添加剤とデバイス構造を最適化することで、発電効率を高めた。その上、室内で多く用いられている照明光源の波長に適するよう有機色素を設計することで、室内光源で高い発電性能を得ることができる。例えば、標準的な白色LED(200ルクス)の照明環境下で発電性能を比較した場合、アモルファスシリコン太陽電池の6.5μW/cm2に対して、新開発の色素増感太陽電池は13.6μW/cm2となり、2倍以上も上回った。これまで発表された電解液型の色素増感太陽電池でも最高性能は8.4μW/cm2であり、1.6倍以上になったという。

 耐久性能としては、85℃環境下で2000時間経過しても、最大出力値の低下は起きないことが実施した試験で確認されている。

 色素増感太陽電池は、色素の可視光吸収を利用して発電するデバイスで、微弱な光でも効率よく発電することができる。一般的な構造は表面に有機色素を吸着した微小な酸化チタン粒子からなる多孔質膜を形成した透明導電性基板と、金属薄膜を形成したガラス基板の間に、ヨウ素系電解液を封入している。今回、新たな材料や製膜技術を用いて、固体材料のみで電解質の構成を可能とした。

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