かつて、中国でMP3プレーヤ向けチップベンダーとして名をはせていたActions Semiconductor。同社は、中国のファブレス半導体企業としては、最も古い歴史を持つメーカーの1つだ。MP3プレーヤ市場の縮小や社内のいざこざで、衰退してしまった時期もあったが、新しい経営体制の下、復活に向けて着実に歩んでいる。それを支えている戦略の1つが、“Apple以外のメーカー”を狙うというものだ。
Actions Semiconductor(以下、Actions)は、モバイル向けSoC(System on Chip)を手掛ける中国のファブレス半導体企業である。同社を「MP3プレーヤ市場の縮小とともに衰退しつつある半導体企業」と見限っている人々もいるようだが、Actionsが広東省の珠海(シュカイ)に構える本社を見たら、そうは思えなくなるだろう。
614人の従業員が勤務するActions本社は、シリコンバレーの企業のオフィスと比べても、かなり壮大だ。現在、Actionsは、モバイルオーディオプレーヤやビデオカメラ、タブレット端末といった民生用モバイル機器に、確実に焦点を絞っている。
Actionsの10年の歴史は、中国の第1世代のファブレス企業の中でも、“失敗の縮図”ともいえるものだった。しかし、新しい経営体制の下、同社はタブレット端末など新しい市場での機会を追求し、復活を証明したのである。
既に飽和状態といえるアプリケーションプロセッサ市場でのActionsの競争能力は未知数だ。だが、同社は、ホワイトボックスベンダーの広大なネットワークをうまく利用しようと考えている。ホワイトボックスベンダーの多くは、Actionsの本社近くに位置する珠江(シュコウ)デルタに拠点を置いている。
Actionsが掲げた戦略は、Apple以外のメーカー、つまり“non-Apple”を狙うというものだ。
何を製造するにしろ、Apple以外のメーカーの製品にリーチできるのならば、どの市場も軽視すべきではないとActionsは主張する。Actionsは、同社のチップを搭載できそうなnon-Apple製品の市場規模は、2012年に6億6000万米ドルに達したとみており、2013年には9億2000万米ドルに増加すると予測している。
Actionsは、以前からMP3プレーヤ向けチップのベンダーとして知られてきた。同社が急速に成長する中国のタブレット端末市場に本格的に参入したのは、わずか1年前のことだ。しかも、その数四半期前の時点で、中国のアプリケーションプロセッサベンダーであるRockchipとAllwinner Technologyが、既に同市場の支配権を握っている。
だが、ActionsのCEO(最高経営責任者)を務めるZhenyu Zhou氏は楽観を崩さない。EE Timesとの最近のインタビューの中で、同氏は、「成長著しい現在のタブレット市場では、状況は変わりやすいと確信している」と述べた。Actionsの目標は、タブレット端末向けアプリケーションプロセッサの市場で10〜20%のシェアを獲得することだという。
同社が直面している課題の中でも、とりわけ困難なのが、厳しい価格設定と利幅の低下だろう。さらに、ベースバンド技術に対する大規模な投資も必要になる可能性がある。
Actionsの戦略を理解することは、中国のエレクトロニクス産業における激動の歴史を理解することにつながる。Actionsの社歴は1990年代にさかのぼる。台湾、香港、韓国のエンジニアから成るグループが珠海にやって来て、IC設計チームを結成したのだ。
だが、なぜ珠海だったのだろうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.