これらの特長的な形状から、他のナノカーボン材料と異なる多くの独自的な特性を備える。
まず、集合体の直径が100nm前後と、大きさが均一という点がある。大きさ、形状にばらつきがないため、材料として安定した特性を出しやすい。
角のように閉じた形状だが、閉じた先端部分に穴を空ける「開孔」が行え、中にモノを詰めることができる。開孔の方法は、熱を加え燃やすことで実現できる。先端にだけ存在する5員環は、6員環より物質的に弱く、より低い温度で燃える。そのため、5員環は燃えるが、6員環は燃えない温度の熱を加えることで、先端に開孔できるという仕組みだ。カーボンナノチューブも筒の中に、モノを詰め込むことはできるが、アスペクト比が大きいためモノを取り出すことが筒両端の一部しかできない。一方、カーボンナノホーンは、アスペクト比が小さいため、詰め込んだモノを取り出すことができる。
ウニのような形であるため、表面積が大きい。1g当たりの表面積は400m2に達する。さらに、開孔して筒の中も露出させることで、さらに表面積を増やすことができ、1g当たり1400m2とい広い表面積を実現できる。ちなみに、直径の小さな単層カーボンナノチューブも理論的には表面積が大きいが、複数のチューブが束になってしまうバンドル構造体を形成しやすいため、現実的には表面積は小さくなっている。
集合体の直径サイズなどから、分散安定性が高い、すなわち、溶媒に対してよく混ざるという特性もある。混ざった後もカーボンナノホーン同士で固まる凝集体が形成されにくく、混ざったままを維持できる。加えて、物質の撥水性の有無などを決める表面官能基も開孔処理時の温度や酸素濃度を変えることで、さまざまな表面官能基に変化させることができ、開孔タイプのカーボンナノホーンであれば、水溶性も実現でき、どの溶剤に対しても分散安定性が発揮されるという。
カーボンナノホーンは、他のナノカーボン素材よりも製造しやすいという特長もある。生成方法は至って単純。グラファイトにレーザーを照射し、グラファイトを蒸発させて、それを冷やすだけで、生成できる。他のナノカーボン素材は、金属触媒を使用するなど複雑な工程、高価な材料が必要であり、製造コストはどうしても高くなる。その点、カーボンナノホーンは価格を抑えやすい。
生成時に金属溶媒を使わないという点により、高純度で生産が可能だ。カーボンナノホーンでない部分も、グラファイトか炭素であり、物性を大きく左右する要素にもならない。さらに、金属溶媒を使わないため、有害性も極めて低い。「これまでの種々の動物実験や細胞実験では短期での毒性が確認されていない」(NEC)として、体内に取り込んでも問題がないと考えられている。
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