今回は、エンタープライズ用SSDとクライアント用SSDの信頼性を解説する。これら2つの用途は信頼性に対する要求仕様が異なる。だが、クライアント用SSDは信頼性に関して開示されている情報が少なく、それが大きな問題の1つとなっている。
いきなりで申し訳ない。訂正を少し。故障率の定義として「平均故障間隔(MTBF:Mean Time Between Failure)」を紹介していたのだが、Webサーバやデータセンターなどの巨大システムの一部であるストレージについては、MTBFの代わりに「平均故障時間(MTTF:Mean Time To Failure)」を使うことが多い。MTBFは、故障した部品(ストレージ)を修理して再び稼働させることが前提の指標である。これに対してMTTFは、修理せずに交換することが前提の指標であり、最近のエンタープライズシステムにおけるHDDとSSDの使われ方を考慮すると、MTTFで表記することが適切といえる。なおAFR(年平均故障率)とMTTFの関係は、MTBFと同様である。
話題をSSD(Solid State Drive)に戻そう。SSDの製品カタログやデータ・シートなど眺めていると、本文や注釈などでしばしば、「JESD218A」あるいは「JESD218」の文字に出くわすことがある。これらはSSDの信頼性とテストに関する技術規格で、半導体業界の標準化団体JEDECが策定したものだ。JEDECは半導体デバイスの技術規格を数多く策定してきたのだが、NANDフラッシュメモリの応用製品であるSSDに関しても、技術規格を策定した。この技術規格が「JESD218A」であり、要求仕様とテスト方法を記述している。またJESD218Aを補う規格としてテストの負荷を詳述した「JESD219」がある。
「JESD218A」では、信頼性に対する要求仕様の違いでエンタープライズ用SSDとクライアント用SSDを区別している。大きな違いは稼働条件と電源オフ時のデータ保持時間、それから訂正不可能な誤りの発生率(UBER:Uncorrectable Bit Error Rate)にある。エンタープライズ用が毎日24時間の稼働を前提にしているのに対し、クライアント用は毎日8時間の稼働を要求仕様としている。電源オフの期間はエンタープライズが短く、クライアントが長い。エンタープライズ用途ではメンテナンスを除くと電源をオフにすることはあまりないと想定されるからだ。これに対してクライアント用途では電源がオフの期間が長くなることがある。また、訂正不可能な誤りの発生率(UBER)は、エンタープライズ用SSDが低く抑えるように要求されている。
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