IBMの研究者であるWilifried Haensch氏は、“ポストCMOS”の技術の進歩が最も期待できそうなのは人間の脳をまねた神経形態学的システムであり、「ビッグデータのパターン認識を根本から変える可能性がある」と述べた(関連記事:AI活用の本命はビッグデータなのか?)。
このアプローチにはアナログコンピューティングへの転換が不可欠だ。アナログコンピューティングは、新材料の研究を要する。現在の取り組みではシナプスを模倣するデバイスの開発に焦点が当てられている。
研究者の間では、カーボンナノチューブに再び注目が集まっている。Haensch氏は貫通シリコンビアを用いたチップ積層の代替方法として、カーボンナノチューブを用いてシリコンウエハー上の3D構造を成長させるコンセプトを示した(関連記事:カーボンナノチューブから生まれたプロセッサ、動作に成功)。
Haensch氏は、これまではそれほど期待されていなかったように思える選択肢(断熱や量子コンピューティングなど)についても考察した(関連記事:完全な量子テレポーテーションに成功)。
Intelの元プロセッサアーキテクトであるColwell氏は、Haensch氏が説明した全ての技術について、「どの技術もメインストリームにはならないが、いくつかは非常に有用なニッチ分野を見いだすかもしれない」と述べた。Colwell氏は現在のCMOS技術の展望に関する見解でよく知られた人物である。
ムーアの法則は終えんの時期に差しかかっている。終えんを迎える時期について議論はできるが、例えば2035年まで持続できるかどうかは分からないし、代替となる技術もない。
Intelは、同社がやるべきと思われる準備をしているようには見えない。私はIntelの株主として、あるいは同社に勤める多くの友人がいる身としても、そのようなIntelの姿勢を少し恐ろしく感じる。業界は歩く屍のようによろめき、しばらくは有用な方向には進まないとみられる。われわれは、ムーアの法則が終わりつつあることを認めた上で、現実を見据えなくてはならない
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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