Broadcom(ブロードコム)のCTO兼会長であるHenry Samueli氏は、「微細化の限界は5nmから7nmプロセスになるだろう」と予想する一方で、28nmプロセス以降では、コストがあまりにも高いため、「微細化の魅力は薄れつつある」と述べる。
Broadcomの共同創設者で、CTO(最高技術責任者)兼会長を務めるHenry Samueli氏は、2013年5月に行われたイーサネット技術関連のイベントにおいて「ムーアの法則は減速し、終えんに近づいている」と述べた(関連記事:「ムーアの法則は間もなく終えんを迎える」、BroadcomのCTOが語る)。半導体業界に身を置く幹部がこうした見解を明らかにするのは初めてのことだったが、見解の内容自体についてはそれほど驚くようなことではない。ただ、同氏は「ムーアの法則が終えんを迎えても、Broadcomにとってはそれがメリットになる」とも述べていて、筆者は混乱した。なぜ、Samueli氏はそのように述べたのだろうか。
同氏は、「ムーアの法則が終われば、設計関連の優れたアイデアを考える時間を確保できる。次世代のプロセス技術開発を急ぐのではなく、新しいアーキテクチャや回路設計などの開発に取り組めば、設計分野において多くのチャンスを創出することが可能になる。Broadcomのような企業にとっては、大きな価値となるだろう」と説明する。
Samueli氏によれば、Broadcomは今後、シェアを拡大できる可能性があるが、市場全体としての成長ペースは鈍化していく見込みだという。
「エンドユーザー向け製品のイノベーション速度は、今後鈍化していくだろう。さらなる小型化や低価格化、高速化を実現する力は確実に衰え、今後15年以内には行き詰まるとみられる。そこで重要となるのが、最終製品そのものではなく、システムを全体的に活用するための技術だ」(Samueli氏)。
Samueli氏の他にも、こうした傾向について率直に語る人物がいる。半導体素子の国際学会「IEDM(International Electronic Device Meeting)2013」(2013年12月9〜11日、米国ワシントン)の基調講演において、Qualcommのテクノロジー担当バイスプレジデントを務めるGeoffrey Yeap氏は、Samueli氏とよく似た展望を語った。
Yeap氏は、IEDMで発表した論文の中で、「半導体チップメーカーは、低リーク電流、低消費電力、高性能を求める製品仕様に対応する上で、材料/プロセスコストの増大や、設計の複雑化といった問題に直面している」と述べている。
同氏は続けて、「1mm2当たりのダイコストが急激に増加していることから、さらなる微細化を進めることに対して魅力が薄れつつある」と述べる。
「現在、多くのエンジニアが、このような問題を解決すべく、さまざまな分野の研究に取り組んでいる。例えば、新しいバックエンド材料やプロセス技術、3次元積層チップなどの開発を手掛ける他、業界での連携により、EUVリソグラフィ技術や450mmウエハー製造技術など、あらゆる種類の設計技術の最適化に取り組んでいる」(同氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.