半導体事業の強化に国を挙げて取り組む中国。巨額の資金を投入し、国をまたいだM&Aも増えている。
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TSMCのチェアマンであるMorris Chang氏は、「中国の半導体業界は、あと5年もすれば台湾に追い付くだろう」との見解を明らかにした。TSMCにとって、これはチャンスとも脅威とも取れる。
TSMCの共同CEOであるMark Liu氏によれば、現在、中国におけるチップ設計ビジネスの80%はTSMCが握っているという。「助成金によって、中国のチップメーカーは、もっと積極的になってくるだろう。われわれは、このビジネスチャンスをつかむ準備は整っている」(Liu氏)。
脅威なのは、中国のファウンドリである。
Liu氏は、「(中国の)メーカーは、地元のファウンドリを使うという状況になるかもしれない。そうなったら脅威だ」と明かす。
台湾のチップメーカーであるInotera Memoriesのプレジデントを務めるScott Meikle氏は、「中国が半導体業界に投入しようとしている助成金の額は過去最高レベルになる予定だ」と述べる。
Meikle氏は、「この傾向は、決して脅威だけではない。投資の増加によってニーズも強化されるからだ」と語る。「一方で、もし中国が不公平な助成金を提供して、不平等な競争の場を作り出してしまうと、それは脅威になり得る」(同氏)。
香港のSanford C. Bernsteinでアナリストを務めるMark Li氏は、世界的な影響を予測している。「今後数年間で、中国国内のメーカーの勢いが加速するだろう。これによって外国のサプライヤが犠牲を払うことになる」(同氏)。
Li氏は、米国と台湾の設計メーカーは、設計セグメントにおける参入の障壁が低くなることで大きな影響を被るとみている。
台湾のMediaTekほどの規模を持つメーカーであれば中国のライバルとの競争をかわすことができるが、より小規模の設計メーカーはシェアの減少を防ぐ対策を取るべきだとLi氏は指摘する。
InoteraのMeikle氏によると、中国の動きはアジアで二次的な影響を与えているという。
「Samsung Electronicsは最近、半導体にフォーカスした新しいサイエンスパークを韓国に設立すべく、巨額の投資を行うことを発表した。2017年までに140億米ドルを投入するという。これは、半導体への投資を2倍にすると宣言しているようなものだ。Samsungが(中国に対して)潜在的な脅威を感じていることがうかがえる。Samsungが強い分野に投資を集中させることで、その脅威に対処するとみられる」(Meikle氏)。
同氏は、中国のイニシアチブによって、台湾と韓国の間の関係が変化するとみている。「彼らは常に過酷な競争を行ってきた。それは、決してよい意味での競合関係ではなかった。だが、今後はそれが“友好的なライバル関係”に変わっていくと考えている」(Meikle氏)。
中国の投資家グループHua Capital Managementは2014年8月に、米国のカメラセンサーメーカーであるOmniVision Technologiesに17億米ドルで買収を持ちかけていることを明らかにした。同年11月には、中国最大規模の半導体実装/テストメーカーであるJiangsu Changjiang Electronics Technologyが、シンガポールの競合会社であるSTATS ChipPACに買収を提案している。2013年には、中国 清華大学グループ系のIT企業である紫光集団がSpreadtrum Communicationsを買収することを発表した。
今後は、このようなM&Aが増えると予想される。
ある市場調査会社のコンサルタントは、「中国は、膨大な額の資金を投入し、国境を超えたM&Aを推し進めていくだろう。そうすることが、技術を手に入れることと、世界市場での存在感を上げることへの近道となるからだ」と述べている。
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