ウェアラブル機器の台頭により、センサーデータからのデータ収集/処理を専門に行うセンサーハブへの注目が高まっている。日本のファブレス企業であるメガチップスは、Tensilica(現在はCadence Design Systemsの一部)のDSPコア「Xtensa」をベースにしたセンサーハブチップを投入する予定だ。
スマートフォンやウェアラブル機器のセンサーフュージョン向けコントローラ市場に、突如として新たな競合が現れようとしている。日本のファブレス企業であるメガチップスが、新興の同市場に「frizz」と総称されるモーションエンジンとセンサーハブチップを投入するのだ。
frizzは既存のセンサーフュージョン向けコントローラチップとは違い、マイコンベースではない(センサーハブには通常、32ビットのマイコンなどが使われる)。メガチップスの設計チームは代わりにTensilica(Cadence Design Systemsが買収)のカスタマイズ可能な32ビットDSPコア「Xtensa Lx4」をベースとし、3-way VLIW(Very Long Instruction Word)と4-way SIMD(Single Instruction, Multiple Data)を搭載した。
メガチップスの執行役員副事業部長である中村健二氏は、EE Timesに対し、「frizzはウェアラブル機器向けに最適化されている。これまで高速クロックCPUでのみ可能だったマトリクス演算処理など、ハイレベルな演算処理を実行できる。その上、frizzはそのような処理を超低消費電力で行える」と語った。マトリクス演算処理は、カルマンフィルタが必要な歩行者デッドレコニング(PDR:Pedestrian Dead Reckoning)アルゴリズムなどに適している。
frizzは加速度センサー、ジャイロセンサー(角速度センサー)、磁気計を用いて人の動きを演算する他、速度と方向を推定することで歩行者の位置を測定する。例えば、ウェアラブル機器がGPSを搭載していなくても、frizzを搭載すれば、活動の違いを検知(ランニングとウォーキングを判別するなど)したり、歩行速度や距離を推定したりする“次世代の活動モニター”のような製品を実現できるかもしれない。
中村氏は、frizzのさらに有利な点を挙げた。PDRをマップマッチングおよびビーコンと組み合わせて用いると、“屋内ナビゲーション”もできる可能性があるという。例えば、frizz(動作周波数は6.7MHz)をPDRに用いた場合、消費電力は2.4mWである。同氏によれば、ARMの「Cortex-M4F」(動作周波数は80MHz)ベースのマイコンを同じ用途で使った場合、消費電力は38mWになるという。frizzは特にスマートフォンとウェアラブル機器のフィットネスおよびヘルスケア用途に向けて開発された。
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