米大学が、粘土状の導電性物質を発見したという。偶然の産物だったようだが、丸めたり伸ばしたりと、自由に成形できるストレージができる可能性もある。
米国のフィラデルフィアにあるDrexel Universityの研究グループは、粘土のような導電性の新材料「MXene」を開発したと発表した。同研究グループによると、このMXene Clayを用いることで、製造が容易で寿命も長く、高速充電が可能なスーパーキャパシタや電池を実現できる可能性が広がるという。
MXeneは、3層のTi(チタン)と2層のC(炭素)で構成されるもので、その厚みは原子5個分である。開発を手掛けたのは、Drexel University材料工学部のMichel Barsoum教授が率いる研究グループだ。
Barsoum氏と研究グループはもともと、米国エネルギー省(DoE:Department of Energy)から資金提供を受け、チタンベースの積層セラミック材料である「MAX phase」を、スーパーキャパシタ用の電極として使うための研究に取り組んでいた。その過程の中で、MXeneを発見したという。
Barsoum氏は、「MAX phaseからAl(アルミニウム)を除去するための化学エッチング処理を施す際に、通常はフッ化水素酸を用いる必要がある。しかし、博士課程の学生であるMichael Ghidiu氏は、毒性が高く危険なフッ化水素酸を使いたくないと考えた」と振り返る。
そこでGhidiu氏は、フッ化水素酸の代わりに、毒性のない安全なフッ化物塩と塩酸を使用したという。Barsoum氏は、「MAX phaseを大量の黒い粒子に還元してから、それを水で洗浄すると、これまで見たこともない粘土のような物質になった」と言う。
Barsoum氏は、「当初の目的はフッ化水素酸を使わずに済ませることだったが、結果的に、粘土のような物質ができた。安価な上に、丸めたり、思いのままに成形したりできる新しい材料を突然作ることができた」と述べる。
Barsoum氏によると、研究グループがこの新材料をスーパーキャパシタの電極の1つとして使用したところ、ストレージ容量が大幅に向上したという。1cm3当たりの静電容量は900F(ファラド)で、炭素材料のスーパーキャパシタと比べて2〜3倍高いという。
Barsoum氏と研究グループは、今回の研究に関する論文を、英国科学雑誌「Nature」で発表している。同論文では、MXeneをスーパーキャパシタで使用することに焦点を当てているが、この他にも、電池の電極として使用したり、市販のリチウムイオン電池で使われている材料を超えるストレージ性能を提供できる可能性も秘めるという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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