さらに大阪府立産業技術総合研究所のグループが、印刷可能な有機高分子材料を用いたデジタル温度センサーを開発。溶液から簡便に作れる有機高分子材料「PEDOT:PSS」の抵抗が温度により変化する現象を応用し、室温付近で感度の高いセンサーを作製。さらに10cm2/Vsのキャリア移動度を持つ有機半導体「アルキル DNBDT」を用いて抵抗のアナログ値をデジタル値に変換する回路を構築し、デジタル温度センサーを実現した。
そしてこのほど、印刷可能なデジタル回路とトッパン・フォームズが開発した低コストのアンテナデバイスを実装したプラスティック基板、印刷可能な温度センサーを直結させ、13.56MHzのRFIDタグを作製。数十cmの伝送距離で、ある1つのしきい値温度に対して「高いか」「低いか」という1ビット温度データのデジタル伝送を成功させた。
作製したRFIDタグのデジタル回路の大きさは10cm角程度。124ゲートの4ビットシフトレジスタ回路などを形成したという。東京大学新領域創成科学研究科教授の竹谷純一氏は「多ビットの回路を形成した今回の開発成果は、プリンテッドLSIの幕開けを告げるもの」と強調した。
実用化に向けては、素子数は1000個以上を集積し、温度センサーも多ビット化する必要があるが、集積化すること自体に大きな問題はないとする。ただ「現状、99%を超える歩留まりが、素子数を増やした場合に悪化する可能性もあり、開発を続けていく」(竹谷氏)とする。
電子タグの製造コストについて竹谷氏は「温度センサー機能を持つインテリジェントタグを数百円程度で実現できる見込み。単純な個体識別用のタグは、5セント程度の低い製造コストが要求されるため、当面は見合わない。だが、温度センサー機能を持つタグであれば、現状、数千円程度の価格となっており、まずはインテリジェントタグの分野から導入を図ることになるだろう」とする。
これらの開発は、NEDOの戦略的省エネルギー技術革新プログラムの1つとして実施されているもので、高効率、省エネ型のインテリジェント物流システムを構築するための電子タグの開発を目標としている。2014年度末で3年間の実用化開発を終えるが、今後、審査を経て3年後の事業化に向けた実証開発へと移行する見込みだ。
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ノーベル賞の天野氏、GaNパワー半導体研究へ抱負Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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