プリンテッドエレクトロニクスでは、回路を印刷するインクやペーストも重要になる。「プリンタブルエレクトロニクス2015」では、伸縮性がある銀ペーストや、20μmの線幅で回路を形成できる銀ナノ粒子インクなどが展示された。
「プリンタブルエレクトロニクス2015」(2015年1月28〜30日、東京ビッグサイト)では、導電性インクの開発品も多く展示された。プリンテッドエレクトロニクス(印刷エレクトロニクス)において、インクは、基板や印刷技術と同様に重要な要素となる。
東洋紡も、「フレキシブルな基板を使うのであれば、インクやペーストの材料も進化する必要がある」と考えるメーカーの1つだ。同社は、プリンタブルエレクトロニクス2015で、開発中の「ストレッチャブル銀ペースト」を展示した。文字通り、伸縮性がある導電性ペーストだ。フレキシブルディスプレイやセンサーなどに応用すれば、曲げた時や伸ばした時に断線しにくくなるという。
ただし、比抵抗は約100μΩ・cmと、「タッチパネルなどに使われるポリマータイプのペーストとは、1桁劣る」と、東洋紡の担当者は述べる。「ただ、皮膚に貼り付けて生体情報をセンシングするバイオセンサーなどであれば、約100μΩ・cmでも十分だと考えている。そういった用途では、比抵抗よりも伸縮に強いペーストであることの方が重要だという声も聞く」(同社)。
とはいえ、現時点では、伸縮が繰り返されたり、大きく伸ばされたりすると抵抗が高くなっていっていくので、特性の改善は図っていくとしている。1〜2年後の製品化を目指すという。
山形大学 有機エレクトロニクス研究センター時任・熊木・福田研究室は、高精細な回路印刷向けに銀ナノ粒子インクを展示した。このインクの特長は、室温で導電性を発現できる点(低温焼結性)だ。粒径は10nm〜15nm。インクジェット印刷に適用可能で、20μmという細い線幅の回路を印刷できる。
同研究室の説明担当者は、「温度と、導電性の発現は、トレードオフのようなものだった。導電性を発現させるために加熱してしまうと、インクジェットのノズルの周りにインクが付着して固まってしまう」と話す。その点、この銀ナノ粒子インクは、温度をかけなくても導電性が発現するので、PETフィルムなど、熱に弱い素材の基板にも回路を印刷できるようになる。
このインクは、1ピコリットル(pl)レベルのインクジェットノズルで滴下でき、さらに、その液滴が基板上で広がるのを極力抑えているという。そのため、細かい回路を印刷することができ、同じ面積における集積密度が高める。なお、通常のインクジェットプリンタでは、1plの液滴の直径は約10μmで、それが落ちると直径が数倍に広がってしまう。
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