まず、スマートフォン向け技術論文としては、結合器のサイズを1/8.3まで小型化した新しい結合器を発表した。これまでの結合器は、送信側、受信側双方に2つのパターン(計4つのパターン)を用いて差動信号を伝送するものだったが、これを送受信ともに1つのパターン(計2パターン)だけで伝送を実現する新結合器「Two-fold TLC」(T-TLC)を開発。従来より1/8.3サイズの幅0.8mm、長さ7mmの結合器を作製して実証した。
また、従来結合器では、終端抵抗で捨てていた結合時に意図する方向(例えば「正→正」)とは逆に反転してしまった信号(「正→負」になった信号)も、新結合器では、逆側(負側)の信号に加わることができるようになり、「結合度が9dB改善した」という。
結合器のサイズが小さくなったことで、位置合わせが難しくなる懸念が生まれるが、「長さ方向で長さの半分、幅方向では1mm程度ズレていても、伝送が行える」(黒田氏)という。なお実証段階における通信距離は1mm程度だとする(TLCとしては最大5mm程度)。
さらにT-TLCの実証に合わせて、EMC試験を実施。結合器が10mm離れたGPS受信器に干渉しないことと、結合器が2mm離れたLTE/Wi-Fi送信機の干渉を受けないことを確認し、スマートフォンなど小型筐体に無線機を多く積む状況でも、TLCが共存できることを実証したという。黒田氏は「これまで、理論的に他のデバイスと干渉しにくいということが分かっていたが、実際の計測は難しく実証が難しかった。そのため、スマートフォンメーカーがTLCによる非接触コネクタの採用に踏み切れない要因となったが、今回の測定結果によりそうした問題がなくなる」と期待を寄せる。
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