慶応大の黒田忠広氏らのグループは、米国で開催されている国際学会「ISSCC 2015」で電磁界結合を用いた非接触コネクタに関する2件の研究論文を発表する。同コネクタをスマホに搭載した場合でも、他の無線機と干渉しないことなどを実証した内容も含まれ、非接触コネクタの実用化加速が期待される。
慶應義塾大学 理工学部教授の黒田忠広氏らの研究グループは電磁界結合を用いた非接触コネクタの伝送路結合器(TLC:Transmission Line Coupler)を従来の1/8.3に小型化する技術を開発した他、同非接触コネクタをスマートフォンや人工衛星に実装可能なことを実証した。これらの研究開発成果に関する論文は2015年2月22〜26日に米国で開催されている国際学会「ISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference) 2015」において採択され発表される。
コネクタは一般に、電極をバネで圧着することで電気的な接続を図る電子部品だが、その機械的な構造からさまざまな課題に直面している。特に小型化や通信の高速低電力化によって信頼性を確保することが難しくなっている。またコネクタが外部に露出することで防水/防じん性能が実現しにくいといった制約なども生んでいる。
そこで、従来の機械式コネクタに代わる電気的結合を用いた電子式コネクタ(非接触コネクタ)の研究開発が進められている。非接触コネクタに用いる電気的結合としては、容量結合や磁界結合を用いた研究開発が多いが、黒田氏らのグループは、電磁界結合を用いた方式を考案。科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)の研究助成などを受けて開発を行い、2011年の「ISSCC 2011」から毎年、ISSCCで電磁界結合を用いた非接触コネクタに関する論文を公表してきた。
電磁界結合は、隣接した並行する信号線の間で発生するクロストークノイズを発生させる要因であるが、黒田氏らのグループは、このクロストークを意図的に起こし結合(カップリング)として、非接触コネクタを実現してきた。黒田氏は、「容量結合や磁界結合は、寄生素子効果で帯域が狭く、1接続当たり6Gビット/秒以上の高速化が難しい。集中定数系でありインピーダンス整合が取れず、伝送線路につなぐと信号が反射する。一方、電磁界結合を用いる伝送路結合器(TLC)は広帯域、かつ、分布定数系であり、イコライザなど必要なく、市販のコンパレータ1つで高速伝送が行える利点がある」とする。既に、同氏らのグループは、TLCによる12Gビット/秒の高速伝送を実証している。
今回のISSCCでは、主にスマートフォン向け技術論文と、人工衛星向け技術論文の2件の発表を行う。
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