東京工業大学は、新しい変調技術を開発し、低電力のRF無線給電型無線機によって、32QAM(直交位相振幅変調)、2.5Mビット/秒(Mbps)での信号伝送に成功したと発表した。無線機は、5.8GHz帯、113μWで動作する。今回の技術により、周波数利用効率に優れるQAM(直交位相振幅変調)を、低消費電力で実現することが可能になったという。
東京工業大学は2015年2月25日、高周波(RF)無線給電型の超低電力無線機で、多値変調による無線信号伝送技術を開発したと発表した。無線通信機は、5.8GHz帯、113μWで動作し、同大学が開発した「直交バックスキャッタリング回路」により32QAM(直交位相振幅変調)、2.5Mビット/秒での信号伝送に成功した。113μWは、市販の無線機の1/10未満の消費電力である。従来、ミリワット未満の低消費電力では、周波数利用効率に優れるQAMなどの多値変調の実現は困難だった。
なお、本研究結果は、2月22〜26日に米国で開催されている国際学会「ISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference) 2015」で発表されている。
今回の開発に携わったのは、同大学フロンティア研究機構の益一哉教授と精密工学研究所の伊藤浩之准教授、ソリューション研究機構の石原昇特任教授らの研究グループである。
直交バックスキャタリング技術は、トランジスタの入力インピーダンスを時間的に変化させることで、反射波の周波数変換と振幅・位相の変調を行うもの。
下の図は、開発した無線給電型無線機の全体構成である。電源回路、受信機(RX)および送信機(TX)の3ブロックで構成される。電源回路では、親機から送信される、無線給電用のRF信号を整流し、キャパシタに蓄電後、送信機/受信機用の電源電圧を生成する。この電圧を0.6Vと、標準の半分にすることにより、低消費電力化した。
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