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数百万回伸び縮み、「発電ゴム」はセンサーにも向く新規材料(2/2 ページ)

» 2015年05月19日 16時00分 公開
[畑陽一郎EE Times Japan]
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発電量が大きく、柔軟性もある

 圧力(振動)を加えると発電が起こる性質を、一般に圧電効果(ピエゾ効果)と呼ぶ。圧電効果自体は1880年に発見されており、現在ではさまざまな製品に応用されている*2)。例えば機器設備の圧力・振動センサーなどの電子部品は圧電効果を使ったものが多い。

*2) 1880年時点では石英(クオーツ)などの物質が圧電効果を示すことが分かった。石英は逆圧電効果も示す。電圧を加えると収縮・膨張する性質だ。この効果を利用したのがクオーツ時計。

 圧電効果を示す物質の中で最も広く使われているのは、セラミックスの一種であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)。1969年にはセラミックスではなく、高分子材料であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)が圧電効果を示すことが見つかった。こちらもセンサー用材料として製品化されている。

 このような既存の材料にはさまざまな制約があった。リコーの発電ゴムはそのような制約を飛び越える可能性がある。

 PZTは発電量が大きいものの、セラミックスであるため、加工性に課題がある。薄く広い形状に整えることは困難であり、柔軟性がないため、曲面に沿わせることも難しい*3)

 PVDFは有機物の一種。繊維として釣り糸などにも使われている。PZTとは違い柔軟性に優れる。その代わり発電量が少ない。

 「発電ゴムは従来の材料と比較して合成コストが低く、さまざまな形や厚みに加工しやすい。例えばハサミで切ることもできる。さらにPVDFと比較して発電量が1桁高い。PZTと比較した場合、発電量は負荷条件により異なる」(同社)。

*3) この他、応力により割れが生じる、重量がかさむ、PZTでは鉛を含むといった課題がある。

未知の機構によって発電する

 発電ゴムは圧電効果を示す材料と同じような挙動を示すものの、なぜ電力を生み出すのか、はっきりとは分かっていないのだという。

 リコーによれば、発電ゴムの発電機構は従来の圧電材料とは異なる。現在、東京理科大学(山本貴博准教授)との共同研究を開始したところだ。計算化学技術を用いた分子レベルでの発電機構を解析しているという。

 なお、リコーは発電ゴムの組成は公開していない。「複合材料を利用している」(同社)。

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