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MITの研究チーム、従来比で100倍の電力を生成する環境発電デバイスを開発エネルギー技術 エネルギーハーベスティング

MITが開発したMEMSエネルギーハーベスティングデバイスは、電力生成量が従来に比べて大幅に増加した上に、製造コストも削減できる可能性がある。環境発電機能を備えた無線センサーを実現するための足掛かりになるかもしれない。

» 2011年09月20日 16時45分 公開
[Nicolas Mokhoff,EE Times]

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、無線センサー向けにエネルギーハーべスティング(環境発電)用のMEMSデバイスを開発したと発表した。振動エネルギーを利用するもので、従来のデバイスに比べて100倍の電力を生成できるという。

 一般的に、振動エネルギーを使うエネルギーハーべスティング用のMEMSデバイスは、マイクロチップに小型のカンチレバー(片持ち梁)を作り込んで、そのカンチレバーに圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の層を複数枚貼り付けた構造をとる。マイクロチップに振動を加えると、カンチレバーが上下に動く。プールの飛び込み台に取り付けてある板のような動作だ。それによりPZTの層に機械的なストレスが加わり、電荷が生じる。それを電極のアレイで取り出すという仕組みである。

 一方、今回MITの研究チームが開発したデバイスは、カンチレバーは使わない。マイクロチップの上に、橋のような形状の小型の構造物を作りこんだ。この構造物の両端はチップに固定されている。この橋の上に、PZTの層を1枚だけ蒸着で形成した。さらに、小さい重りを中央部に取り付けた。

 MITの研究チームは、「カンチレバーを用いる手法には制約があり、チップを占有するカンチレバーの本数やPZT層の積層数をいたずらに増やすのは効率的ではないし、コストが大きくなってしまう」と述べる。

 MITが開発したデバイスで振動試験を実施したところ、ある特定の周波数だけでなく、幅広い低周波数帯域で振動させることができたという。また、研究チームは、部品に接着した1層のPZTのみで45μWの電量を生成することができると算出した。これは、従来の100倍ほどの数値である。

 MITの機械工学科の教授で、同デバイスの論文の共著者であるSang-Gook Kim氏は、「さまざまな無線センサーが市場に投入されているが、センサーに必要な電力を“自給”できるような製品はまだ見当たらない。われわれが開発したデバイスは、エネルギーハーベスティング機能を備えた無線センサーの実現に貢献する技術になるだろう」と述べている。

 またKim氏は、「エネルギーハーべスティングデバイスの価格が10米ドルでは、数百万個のセンサーを実装していくのはコスト面で厳しくなる。それに比べて、1層のPZTを接着したMEMSデバイスであれば1米ドル以下で製造することも可能だ」と述べている。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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