ドイツの研究機関が、自動運転車の研究開発に精力的に取り組んでいる。充電プラグ付きの無人駐車スペースで走行し、バックで駐車して充電後、ドライバーの元に戻っていくまでを完全に無人で行えるようなクルマを、2016年までに実用化したいとしている。
自動運転車の法的認可に向けていちばん大きな障壁となっているのは、乗っている人に危険が及ぶ可能性があることだ。緊急時には人間(運転席に座っている人)が運転を引き継ぐとしても、その可能性はぬぐえない。ドイツの研究機関であるForschungszentrum Informatik(FZI)は、こうした障壁を克服できる自動運転車の開発を進めていて、2016年の実用化を目指している。
FZIは2016年をメドに、市街地の駐車場の一角に標準仕様の充電プラグを設置すると共に、アルゴリズムを完成させて、既に実用化されているドライブバイワイヤ(Drive-By-Wire、DBW)*)を採用した電気自動車のフラッシュメモリに搭載する計画だという。
*)DBW:電子制御によってアクセルペダルの踏み込み具合とスロットルバルブの開度を連携させる方式。
FZIでは、22人のエンジンニアが数年前から自動運転車(彼らは「コグニティブカー(CoCar)」と呼んでいる)の開発に取り組んでいる。同チームは、米国防高等研究事業局(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)が主催する自動運転車のコンテストに出場して、決勝まで勝ち進んだ経歴を持つ。ただしその後は、完全な自律運転車への足掛かりとして、人が乗らなくても走行可能な自動運転車の開発に集中している。
同研究チームは、開発中のCoCarのプロトタイプにおいて、ドライバーが乗車しない使用事例を見つけ出そうとしている。例えば、ドイツのStuttgart(シュツットガルト)のある駐車場ビルでは2016年に、ビル1階の各駐車スペースに自動充電ステーションを設置して、その階への人の立ち入りを禁止するという。FZIのプロトタイプカーは、標準仕様の充電プラグを搭載し、ドライバーが自動充電ステーションを備えた駐車場の入口に自動車を停めると自動充電される仕組みだ。さらに、この駐車場には中央管理室的な機能が備えられ、最も近い空きスペースの場所を自動車に通知する。FZIのアルゴリズムをフラッシュメモリに搭載した自動車は、電子制御で駐車スペースに運ばれ、バックで駐車した後、充電ステーションに自動的に接続される。自動車の所有者が戻ってくると、車が“呼ばれ”、充電ステーションのプラグが抜かれて、入口付近の待合室まで自律運転し、所有者に引き渡される。
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