これまでの世代の移動通信を振り返ると、3Gは欧州が、4Gは米国が主導してきた。欧州委員会(EC:European Commission)は2013年12月に、5G実用化の取り組みを加速すべく「5GPPP(5G Public-Private Partnership Association)」を発足させているが、佐藤氏は「欧州は5Gの主権を握りたいとは思っているが、EU諸国の動きを見ていると、まだ足並みがそろっていないという印象を受ける」と述べている。
日本では、NTTドコモとKDDI/KDDI研究所が5Gの技術開発に積極的だ。もっと正確に言うならば、5G技術を開発できるような研究所を持っているキャリアが、日本ではNTTドコモとKDDIくらいしかないのだ。特にNTTドコモは、世界的に見ても5Gの技術開発で先行している。
NTTドコモは2015年3月、5Gの屋外実験として、15GHz帯を用いて4.5Gビット/秒(受信時)以上のデータ通信に成功したと発表した。同年5月に開催された「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2015(WTP2015)」では、70GHz帯を使ったビームフォーミング技術の実証実験で、2Gビット/秒以上の最大スループットを出したという結果を展示している。KDDI研究所も、5Gに向けた通信技術として、60GHz帯通信とLTEを組み合わせる通信技術を開発し、WTP2015でデモを行った*)。
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一方で東南アジアなど新興国のキャリアについては、佐藤氏は「5Gにまったく興味を持っていない」と言い切る。東南アジア(ASEAN諸国)では、3Gの普及すら進んでいない国も多い。4Gに至ってはまだ使えない国がほとんどだ。4Gを導入している国でも、4G使用率は極めて低い。「欧米のキャリアの5G動向にすら興味がなさそうだという印象を受ける。ASEANでは、2Gに対応する安いSIMカードを使えばいいという考え方が、いまだに主流だからだ」(佐藤氏)*)。
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