ADAS向けFPGA/PLD製品が好調な理由の1つは、柔軟性と拡張性に優れたプラットフォームであることだ。このため、従来のマイクロコントローラやDSP、GPU、ASSPなどからの置き換えが進んでいる。2004年には自動車メーカーの中で、Mercedes-Benzと日産がカメラやレーダーモジュールに同社製品を採用。2010年にはBMWやVolkswagen、Audi、ホンダも加わり6社が採用した。最近では、トヨタや富士重工業なども含め、16社まで採用が拡大している。これらのADASには、「Spartan-6」や「Zynq All Programmable SoC」などが搭載されているという。
田中氏は、「ADAS用途でザイリンクス製品の需要が急速に拡大している要因の1つは、28nmプロセス技術を用いたZynqの登場が大きい。この製品で顧客の考え方が変わった」という。Zynqは、FPGAが得意とする並列処理と、ARMコアが強いシリアル処理をそれぞれ分割して実行させることで、最適なパフォーマンスを実現することができる。これによって、FPGAが単なるコンパニオンチップではなく、ADASカメラモジュールにおいてはシステムセンタの地位を占めるようになった点を挙げる。
さらにザイリンクスは、次世代ADAS向けにAll Programmable MPSoCと呼ぶ16nmプロセス技術を用いた「Zynq UltraScale+」を市場に投入する。田中氏によれば、「品質や機能安全などに対応した車載向けMPSoC製品の量産出荷は、2017年第3四半期を予定している」という。
Zynq UltraScale+は、ヘテロジニアスなマルチプロセッシング機能を備えている。プロセッシングブロックにはTrustZoneをサポートする64ビットクワッドコア「ARM Cortex-A53プロセッサ」と、Lock-Step機能などを備えたリアルタイム処理向けの32ビットデュアルコア「ARM Cortex-R5プロセッサ」などを搭載する。
これにより、カメラベースのADASを構成する場合に、現在はZynq-7000とホストコントローラを組み合わせた2チップ構成のECUとなるが、MPSoCを用いると1チップで実現することが可能となる。しかも、システム性能は3倍となり、ECUあたりのSoCコストは10%削減、ECUあたりのSoC消費電力は25%の削減が可能になるという。
なお、同社はADASパートナーソリューションとして先進運転支援キット「logiADAK」なども用意している。このキットを用いると、リアルタイムビデオ処理や複数の複雑なアルゴリズムの同時実行などが行える。さらに、自動キャリブレーションIP(logiOWL Vehicle Self Calibration)もサポートしている。この機能は複数のカメラ映像を統合したアラウンドビューを表示する際に、複数の映像が重なり合う部分を容易に最適化することが可能である。この他、ドライバモニター機能向けに顔認識と追跡を行うためのIPなども用意されている。
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