東京工業大学の山元公寿教授らは、19個の原子で構成される白金粒子が、現行の燃料電池に採用されている白金担持カーボン触媒に比べて20倍の触媒活性を示すことを発見した。燃料電池に使用する白金の量を大幅に削減することができるため、燃料電池のコストダウンにつながる可能性が高い。
東京工業大学(東工大) 資源化学研究所の山元公寿教授と今岡享稔准教授らは2015年7月、19個の原子で構成される白金粒子(Pt19)が、現行の燃料電池に採用されている白金担持カーボン触媒に比べて20倍の触媒活性を示すことを発見したと発表した。この技術により、燃料電池に使用する白金の量を大幅に削減することができるため、燃料電池のコストダウンにつながる可能性が高い。
東工大の山元教授らは、「デンドリマー」と呼ばれる精密樹状高分子を用いた原子数が規定できる超精密ナノ粒子合成法を活用し、白金ナノ粒子の原子数を12から20個の範囲で制御しつつ、それぞれの酸素還元反応に対する触媒活性を評価した。
この結果、これまで最も安定で有用と考えられていた13原子の白金粒子(Pt13)は、最も活性が低いことが分かった。これに対して12原子の白金粒子(Pt12)は、Pt13に比べて、活性は2.5倍となる。さらに、Pt19では、Pt13に比べて4倍となり、最も高い活性を示した。また、Pt19の質量あたりの活性は、一般的に用いられている粒径(3〜5nm)の白金ナノ粒子担持カーボン触媒に比べて20倍となることが分かった。
これまで粒径が1nmに近づくと活性が失われるといわれてきた。今回の研究成果により、粒径が1nmを切る白金粒子の中で、極めて高活性の白金粒子を発見できたことで、微小な白金粒子を燃料電池触媒に適用できる可能性が高まった。このため、性能を維持しつつ白金の使用量を減らすことで、コストを削減できるとみられている。今後は実用化に向けて、導電性カーボン担体への触媒高密度担持、MEA(Membrane Electrode Assembly)と呼ばれる燃料電池用膜電極接合体への組込みと最適化、耐久性の向上などを実現していく必要があるという。
なお、今回の成果はドイツ化学誌「Angewandte Chemie International Edition」に、「Finding the most catalytically active platinum clusters with low-atomicity」の論文タイトルで近く掲載される予定だ。
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