5G(第5世代移動通信)の実現を主導するメーカーの1つであるQualcomm(クアルコム)が、5Gを実現する無線技術のコンセプトを明らかにした。同社が現時点で最も重点を置いているのは、変調方式である。
Qualcommが、5G(第5世代移動通信)に不可欠な新しい無線技術のコンセプトを明らかにした。その中には、IoT(モノのインターネット)に向けた低消費電力の新しい無線プロトコルも含まれる。5G標準規格の策定に向けた1回目の会合が2016年3月に予定されていることから、Qualcommをはじめとする数十社の企業は現在、提案規格の準備に取り組んでいるところだ。
5Gの標準規格に関しては、2018年後半に初期版がリリースされ、その後2019年には第2段階の規格がリリースされる予定だという。3GPPグループは、こうした取り組みを主導していく上で、2015年9月末に1回目のミーティングを開催した。5Gの策定に取り組む企業や組織など70の団体がプレゼンを行い、550人の代表者たちが聴衆として参加したという。
Qualcomm Researchのエンジニアリング担当シニアディレクタであり、5G関連の技術研究の指揮を執るJohn Smee氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「今から10年前、4Gの策定に向けて取り組んでいた当時、ミーティング会場では誰もが折り畳み式携帯電話機を使っていて、動画のダウンロードが可能なネットワークの実現に向けて検討を重ねていた。今現在も、まだ見ぬ未来に向けたネットワーク開発への取り組みが行われているが、その状況は10年前当時と同じだといえる」と述べている。
5Gは、スマートフォンはもちろん、無人航空機(ドローン)、ヘッドマウントディスプレイ、低遅延が要求されるミッションクリティカルな新サービスに至るまで、幅広い分野での利用が想定されている。Smee氏はインタビューの中で、「スマートフォン以外の分野での利用も検討されていることから、さまざまなアイデアについて考えるための興味深い期間だといえる」と述べている。
5Gには、高帯域と低遅延サービスとをサポートしていく上で、新しいエアーインタフェースが必要だ。そこでQualcommは、主として既存のOFDM(直交周波数分割多重方式)をベースとしたインタフェースファミリを提案している。高帯域に向けてマルチユーザーMassive MIMOをサポートする他、低帯域やIoT向けとして、「non-orthogonal Resource Spread Multiple Access(以下、RSMA)」などのサポートも追加するという。
5Gは、産業/医療用途での新たな使用方法の実現に向け、道を切り開いていくと期待されている。
ただしQualcommは、RSMAを、“IoT向けOFDMの例外”と見なしている。Qualcommによると、RSMAでは、少量のデータを最小限の信号オーバーヘッドで伝送することが可能になるという。また、RSMAでは直交よりも時間拡散および周波数拡散を採用するとしている。
Qulacommは、まずは6GHz帯以下のランセンス周波数帯およびアンライセンス周波数帯(免許不要の周波数帯)について、第1フェーズで定義してほしいと3GPPに求めている。ミリ波帯に関する規格策定は、2019年以降になりそうだ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.