東京工業大学(東工大)大学院理工学研究科の吉松公平助教と大友明教授らの研究グループは、リチウムイオン電池の充放電原理を用いて、チタン酸リチウムの超伝導状態を制御することに成功した。超伝導デバイスの実現につながるものとみられている。
東京工業大学(東工大)大学院理工学研究科の吉松公平助教と大友明教授らの研究グループは2015年11月、リチウムイオン電池の充放電原理を用いて、チタン酸リチウムの超伝導状態を制御(スイッチング)することに成功したと発表した。今回の成果は、超伝導制御をリチウムイオンの移動で行う超伝導デバイスの実現につながるものとみられている。
研究チームは、超伝導材料であるチタン酸リチウムの薄膜を作製し、リチウムイオン電池の負電極に用いた。試作したこの電池で充電・放電操作を繰り返し行い、チタン酸リチウム薄膜の電気抵抗を測定した。
実験では超伝導状態のチタン酸リチウム薄膜に、リチウムイオンを挿入する充電反応を行った。そうしたところ、常伝導状態への転移が観測された。逆に、チタン酸リチウム薄膜からリチウムイオンを脱離する放電反応を行うと、再び超伝導状態に回復させることができたという。
さらに、充放電操作の前後における超伝導転移温度を比較した。そうしたところ、両者は完全に一致しており「可逆的な超伝導転移」であることが分かった。超伝導転移については、充電と放電のサイクルを繰り返し行っても、安定に発現することを確認している。
研究チームは今回の研究で、リチウムイオン電池の充放電現象を利用することにより、超伝導状態が制御できることを実証した。今後は、超伝導エレクトロニクスを実現するための応用研究として、セル構造の小型化や全固体化などの研究に取り組む計画だ。
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