中国のスマートフォン市場で、Qualcommのシェアを勢いよく奪ってきた台湾MediaTekだが、2016年はその動きにも陰りが出てきそうだ。
2015年、MediaTekはQualcommからスマートフォン市場のシェアを奪ったが、同社によると、そのような動きは2016年に鈍化する見込みだという。より大規模な競合先がハイエンド領域向けに新製品を展開しているためだ。
過去12カ月間、世界最大のスマートフォン市場である中国においてMediaTekのシェアは2倍近くに伸びた。その背景には、同社がQualcommのSoC(System on Chip)「Snapdragon 600」と「Snapdragon 800」に対抗すべく、オクタコアの新製品を発売したことがある。だが、現在では形勢は少し厳しくなっている。
MediaTekの最高執行責任者(COO)に最近任命されたJeffrey Ju氏は、EE Times Taiwanとのインタビューの中で、「2015年に達成した90ポイントの伸びはみられないかもしれないが、70ポイントならまだ可能だ。当社はまだハイエンド市場に参入していない。当社の競合先はSnapdragon 810で失敗したが、そのことは当社の市場シェアの伸びの直接的な要因ではない。だからこそ、当社にはまだ多くの機会がある」と述べた。
QualcommのSnapdragon 810は消費電力面で課題があると伝えられているが、今後早い時期に投入が見込まれるSnapdragon 820ではこの課題は改善されるとみられる。アナリストの中には、Snapdragon 820を“返り咲き”を象徴するチップとみる向きもある。一方、MediaTekは2016年にハイエンドスマートフォン向けに次世代SoC「Helio x30」を発売する計画だ。Ju氏によると、この製品はTSMCの16nm FinFET+プロセスで製造され、LPDDR4メモリ、UFS(Universal Flash Storage)、4Kディスプレイに対応するという。
複数の専門家は、2016年も競争はより激しくなるとみている。
Credit Suisse(クレディ・スイス)のアナリストであるRandy Abrams氏は、「ZTE、Coolpad、TCL、Xiaomiといった中国の大手スマートフォンメーカーにおいてはQualcommのけん引力は依然として高いが、比較的小規模な中国メーカーやホワイトボックスメーカーではMediaTekが大半のシェアを維持しており、Qualcommのけん引力は弱いままだ。Qualcommは2015年下半期と2016年前半にチップセットの改良によってけん引力を取り戻すことを狙っている」と述べた。
Abrams氏によると、Qualcommはエントリー層向けに「Snapdragon 200」シリーズを提供していて、「Snapdragon 400」および「Snapdragon 600」シリーズの新しい製品も発表する予定だ。これらの新しいチップセットはローエンド向けにもかかわらず、オクタコアやキャリアアグリゲーション対応などを搭載したものになる。
Qualcomm、MediaTekともに、競争力を磨く必要はある。スマートフォン市場の成長は全体的に鈍化している。市場調査会社のIDCによれば、同市場の2015年の成長率は、2014年の27.5%から10.4%にまで減少する見込みだ。MediaTekのJu氏は、「スマートフォン市場は確実に“冬の時代”に突入している。冬が過ぎれば訪れる春も、以前ほどまぶしいものではないだろう。だが、春は来る。最先端技術に対するニーズがそれほど強くなく、競合他社との技術的な差もそこまで開いていない今、われわれに機会が訪れるということだ」と語った。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.