STMicroelectronicsはイスラエル企業と共同で2016年後半に、車車間(V2V)/路車間(V2I)といったV2X向けSoCとして、無線規格IEEE 802.11pのベースバンドチップとセキュアエレメントを1チップ化した高集積型製品の出荷を開始する予定だ。
車車間(V2V)/路車間(V2I)といったV2Xは、付近のクルマやインフラと位置や速度などの情報を相互に通信するもの。それら情報を基に交差点や車線合流部などで他車が接近しているとの警告を発することなどができ、クルマの安全性や快適性を高められる。そうしたV2Xの通信手段として、Wi-FiをベースにしたIEEE 802.11pが規格化され、世界的に利用される見込みになっている。
STMicroelectronicsは、このIEEE 802.11pを使ったV2Xシステム向けデバイスの開発に着手。開発にあたっては、IEEE 802.11p用のRFトランシーバー/ベースバンドプロセッサを製品化実績のあるイスラエルのAutotalksと協業し共同で実施。2016年後半には、新たなベースバンドプロセッサを製品化して、サンプル出荷を開始する見込みだ。
開発中の新ベースバンドプロセッサは、既に量産が始まっているAutotalksのベースバンドプロセッサ「CRATON」の後継版という位置付けで「CRATON2」との名称となる。CRATON2は、これまで外付けで対応していた暗号化エンジンなどのセキュアエレメントを統合した高集積型ベースバンドプロセッサとなる。Autotalks日本事務所カントリー・マネジャーの中松彰氏は「従来より当社のセキュアエレメントは、多くのハードウェアエンジンを搭載し、より強固なセキュリティ機能を遅延なく処理できるという特長を備えてきた。CRATON2では、この強力なセキュアエレメントを統合し、競合製品にはない高度な高集積性を実現できる」との見通しを語る。
STMicroelectronicsでは、CRATON2とともに、AutotalksのRFトランシーバー「PLUTON」、自社の衛星測位システム(GNSS)用IC「TESEO」というV2Xシステムに欠かせないデバイスを組み合わせた“V2Xソリューション”として自動車/電装品メーカーに対し提案する方針だ。
PLUTONは、IEEE 802.11pの無線周波数帯として海外で主流の5.9GHz帯とともに、日本などで使用する760MHz帯のいずれにも対応するマルチバンド対応が特長。「1つのデバイスで、さまざまな仕向け地に対応できる利点がある」(中松氏)。
TESEOに関しても「GPS、Galileo、GLONASS、QZSSといった各種GNSSに対応する上、ソフトウェアで位置補正する機能も備えており、通常のGPSでは10m程度の誤差が生じるが、TESEOは誤差1m程度という高い精度の位置を検出できる」(STマイクロエレクトロニクスオートモーティブ製品グループ マイクロコントローラ&インフォテインメント製品部長 本橋裕司氏)。
STMicroelectronicsは、こうした特長を持つV2Xソリューションを2016年1月13〜15日に開催された国際カーエレクトロニクス技術展で紹介した他、CRATONが採用されたV2XシステムのECUを公開した。
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