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IEDMで発表されていた3D XPointの基本技術(前編)福田昭のデバイス通信(60)(2/2 ページ)

» 2016年01月27日 09時45分 公開
[福田昭EE Times Japan]
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1960年代に発見された「オブシンスキー効果」が源流

 記憶素子がカルコゲナイド材料であることから、記憶原理は「相変化」だと推定する。3D XPointメモリは、相変化メモリの一種だと見なせる。

 注目すべきは、セル選択素子が「オボニック・スイッチ」だということだ。オボニック・スイッチ、厳密には「オボニック・スレッショルド・スイッチ(OTS:Ovonic Threshold Switch)」と呼ばれるスイッチは、米国を代表する発明家Stanford R. Ovshinsky氏が1960年代に発見した、カルコゲナイド材料の重要な性質に基いている。「Ovshinsky(オブシンスキー)効果」とも呼ばれるこの現象は、カルコゲナイド材料が電気的性質と光学的性質の異なる状態を可逆的に行き来することで知られる。

 オブシンスキー効果からは2つの電気素子が生まれた。1つが相変化メモリ(PCM:Phase Change Memory)、もう1つが超高速スイッチ(OTS)である。相変化メモリには光学的なメモリと電気的なメモリの両方が存在し、光学的なメモリは相変化型光ディスクとして商品化された。

 3D XPointメモリは、セル選択素子と記憶素子の両方にカルコゲナイド材料を使い、動作原理はいずれも、オブシンスキー効果に基づく。Blalock氏の講演に「その開発に向けた取り組みの歴史は、1960年代にまでさかのぼる」とあるのは、1960年代に発見されたオブシンスキー効果と、この効果を利用した研究開発の長い歴史を指していると思われる。

2009年の国際学会IEDMで3D XPointメモリのひな型を公表

 PCMとOTSを利用した3次元(3D)積層可能なクロスポイント・メモリは、電子デバイス技術の国際学会IEDMで発表されたことがある。IntelとNumonyxが共同で、2009年のIEDMで試作チップを公表していた(講演番号27.1)。Numonyxは、IntelとSTMicroelectronicsが合弁で設立したフラッシュメモリの開発企業であり、2010年にMicronによって買収された。IntelとNumonyxの組み合わせが、IntelとMicronの組み合わせに変わり、3D XPointメモリへと至る流れができたことになる。

 IntelとNumonyxが2009年のIEDMで公表した試作チップは、90nmのCMOS技術によって製造された。記憶容量は64Mbit、クロスポイントの層数は1層である。

PCMとOTSを利用した3次元(3D)積層可能なクロスポイント・メモリの断面構造 PCMとOTSを利用した3次元(3D)積層可能なクロスポイント・メモリの断面構造。CMOSロジック回路の上に、メモリセルアレイを積層している(第2層金属配線と第3層金属配線の間)。「IEDM 2009」でIntelとNumonyxが共同発表した論文から(クリックで拡大)

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