DLP製品の代表的な新しい用途が、産業機器だ。赤外線など不可視光も反射でき、高速にミラーを制御できる点などから、露光装置や3次元計測、分光器といった用途のキーデバイスとして、使用できる。TIでは、これまで産業機器分野などDLP製品になじみが薄い市場でも、容易にDLP製品を導入できるよう評価キット/レファレンスデザインの提供を強化し、産業機器や医療機器など非映像ディスプレイ市場向けのDLP製品販売サポートチームの強化を実施してきた。
その結果、「まだまだDLP製品全体に占める非映像ディスプレイ向けへの出荷割合は小さいものの、極めて高い成長率で採用が拡大している。この傾向は、今後、さらに加速するだろう」(Novak氏)とする。非映像ディスプレイ用途での急成長が“さらに加速する”要因が、自動車だ。TIでは、2013年に車載グレードのDLP製品を開発して以来、自動車市場での提案を実施。その結果、2016年に市販される自動車のヘッドアップディスプレイ(HUD)の表示デバイスに採用され、いよいよ車載市場でDLP製品のビジネスが始まる見込みだ。HUD以外にも、「前照灯の制御用途でも採用が決定している」とし、2016年以降、「車載向けビジネスは、産業機器向けと同じように急拡大する見込み」(Novak氏)と期待を寄せているのだ。
TIでは、DLP製品の高性能化も引き続き、継続する。2016年1月には、4K対応DLP製品として、ホームシアター用途に対応する低価格版製品を発表した。
同新製品は、これまでデジタルシネマ用途に展開してきた4K対応製品に比べDMDの大幅な小型化を実現。従来の4K対応DMDは対角ミラーアレイ寸法は、1.4インチだったが、新製品は0.67インチとなった。価格に直結するDMDのサイズを小型化できた背景には、“DLPの高速性”がある。新製品は、マイクロミラーを1秒間に9000回以上、スイッチングすることができ、フレームごとに、1つのマイクロミラーで、2個のピクセルを別個に投影することが可能。これにより、約800万ピクセルの4K解像度を、約400万枚のマイクロミラーで投影することが可能になり、DMDを大幅に小型化することに成功した。
1つのマイクロミラーで2ピクセル分の動作をさせる技術の適用は、今回の新製品が初めてであり、今後、同技術を他の解像度の製品へ展開することで、さらなる小型化、低価格化が図れ、DLP製品の応用範囲が拡大することが見込まれる。
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