――5Gと4Gの互換性は?
Kimery氏は、「5Gと4Gの互換性はない。現在議論が進められている技術は、1Gと2G、3Gからは脱却することになる」と述べる
しかし、GSMAのHutton氏は、微妙に異なる見解を示す。「5Gは、1つの技術というより、むしろエコシステム標準だといえる。このため5Gは、4Gに対する後方互換性を維持できると考えられる」(同氏)。
Kimery氏の見解は、3GPP(3rd Generation Partnership Project)が2015年秋に、5Gについて合意した内容をベースとしている。
――これまで何度も5Gのテストに関する発表があったが、いまだに標準規格の策定さえも完了していない。一体、何を検証しているの?
これまで実施されたテストは、ほとんどが“実用化前の検証”で、実用化の可能性と信頼性を確認するためのものだ。業界では、6GHz以上のミリ波周波数帯を使った5G通信に対する関心が高まっている。Kimery氏は、「6GHz以下の周波数帯だけを使ってきた携帯電話業界にとって、6GHz以上のミリ波周波数帯を使うことは大きな飛躍だ」と述べている。
ただし、ミリ波に対応した携帯電話システムの実現には課題が多い。チャネル障害や高周波帯の伝搬特性に伴う問題など、課題は山積している。
Kimery氏は、「現在は、多くのキャリアやネットワーク機器ベンダーが、独自システムの性能テストを実施し、検証結果を収集している段階だ」と述べている。
――6GHz以上の異なる周波数帯を使ったミリ波システムの検証結果に対する関心は高いのであれば、具体的に、どんなキャリア/機器メーカーが、どの周波数帯を使ったシステムのテストを行っているの?
Kimery氏は、「残念ながら、ほとんどのキャリア/機器メーカーはテストの内容や結果を明らかにしていない」と答えた。GSMAのHutton氏も、Kimery氏と同じく「結果は公表されていない」と述べている。
Kimery氏は唯一の例外として、NTTドコモの名前を挙げた。
NTTドコモは2015年11月に、それまでに実施した5Gのテストに関する詳細の一部を公表した。
ドコモとNokia Networksは2015年10月、東京の六本木ヒルズで、70GHzの超高周波でミリ波信号を使った5Gの検証テストを実施した。ドコモは、「これは商用施設で実施された初めての5Gデータ伝送実験で、2Gバイト/秒を上回る超高速データ伝送を達成に成功した」と発表した。
ドコモはこの他にも2015年11月に、韓国のSamsung Electronicsと5Gの検証テストを実施している。このテストでは、28GHzの高周波信号を使って、多数のアンテナ素子を用いたビームフォーミング機能とビームトラッキング機能を組み合わせたデータ伝送を検証した。
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