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中国製Wi-Fiルーターから見えるLTEモデム事情製品分解で探るアジアの新トレンド(3)(3/3 ページ)

» 2016年03月08日 11時30分 公開
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“All Taiwan”“All China”ではない理由

 図5に掲載したQualcommのモデムチップ「MDM9215」は、2G/3G通信からLTEまでの3世代の通信方式に加え中国で主流のTDD方式、欧米日本で主流のFDD方式にも対応する、ほぼ全ての通信方式に対応するチップである。

 今回扱ったKinLeのWi-Fiルーターのチップ構成はWi-Fiチップを除けば、ほぼ全てがAppleの「iPhone5/5s」のモデム部と同じものであった(Qualcommセットからパワーアンプまで!)。iPhone5/5sは2012〜13年の製品、MDM9215は第1世代のLTEモデムで若干古い。その後MDM9X25、MDM9X35とブラッシュアップを進め、通信速度も、150Mbps⇒300Mbps⇒450Mbpsと向上。KinLe製品はLTEの初期速度である150Mbpsのチップを活用することで端末価格を抑えている。150Mbpsという通信速度は、通常の使用ではほとんど問題はないものである。通信部、ハード的にはKinLe≒iPhone5であるからだ。

 AppleのiPhone5やSamsungのGalaxy S3で使われたMDM9215チップセットは、世界でもっとも出荷されたLTEチップである。150Mbpsの通信速度で十分な場合、実は今、Qualcommしか選択肢がないのだ。IntelやMediaTekは、300Mbps以上のチップからLTEに参入し、値段も若干高い。一方過去の大量生産で値段がこなれたQualcommチップは量産効果で、レガシー価格を設定できている。中国HiSiliconのチップセットはHuaweiのプラットフォーム向けに限定されていて、広く一般販売されていない。このような状況なので、KinLeのようなQualcomm構成の通信ルーターが中国では今はメインなのだ。All Japanで作れないことは別途、問題視したい。

執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年に渡る半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


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