まず、1つの課題が為替影響だ。ここまでの利益改善は、固定費削減効果による部分が最も大きく貢献しているが、為替が変革プラン実施中、大きく円安に振れたことも少なからず寄与している。そうした中で、足元の為替は、利益水準を押し下げる円安方向に転じてしまっている。
2つ目は、熊本地震の影響だ。前工程製造拠点の川尻工場(熊本市南区)と、後工程の製造委託先3社が被災し、熊本地区での製造が一時停止した。川尻工場が4月22日から一部生産を再開するなど、委託先も含め現時点で生産再開にこぎ着けたが、地震前の生産水準を回復するのは、川尻工場で5月22日、委託先で6月中とみられ、低稼働率での生産を余儀なくされてしまっている。現時点で、震災影響が業績にどの程度影響を及ぼすかは不明であるが、減収減益要因になることは確実だ。
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そしてもう1つの課題が、注力製品で採算割れ製品(ルネサスでは「低GP製品」と呼称)が生じてしまっていることだ。本来、高い利益率が見込める製品を“注力製品”として選択しているはずだ。しかし、「(作田元会長就任に伴う)マネジメントチェンジ以前の商談で獲得した案件」(柴田氏)で、「当時の工場稼働主義で、かなり無理して(低価格で)受注を獲得した」(鶴丸氏)という製品の量産、納入時期が今になって到来し、利益を圧迫し始めているのだ。
この採算割れ製品案件は自動車向け製品で、2015年実績で全社売上高の4%を占める。さらには「2016年度は、納入のピークになり(全社売上高比で)5〜6%に達する見込み」(柴田氏)。ルネサスの売上高のちょうど50%は自動車向け事業が占める。この主力事業の売り上げの1割以上が“採算割れビジネス”になってしまう公算で、負の遺産が重くのしかかってしまっているのだ。
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