構造計画研究所と東北大学は、「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP) 2016」(2016年5月25〜27日/東京ビッグサイト)で、通信インフラがない場所でもスマートフォン同士でリレーして、ローカルネットワークを構築する技術「スマホdeリレー」を展示した。
構造計画研究所と東北大学は、2016年5月25〜27日に東京ビッグサイトで開催された「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP) 2016」で、「スマホdeリレー」を展示した。スマホdeリレーとは、スマートフォン(スマホ)同士の通信を使い、通信インフラがない場所でもスマホ同士でリレーして、ローカルネットワークを構築する技術。災害など緊急時の情報通信、旅行や登山でのトランシーバー的な役割が期待される。
構造計画研究所がアプリケーション、東北大学がアルゴリズム部分を開発している。端末間の直接通信を可能にする規格「Wi-Fi Direct」活用し、通信相手や接続/切断のタイミングを決定する独自の接続制御技術とDTN(Delay/Disruption-Tolerant Networking)を融合しすることで、効率の良いマルチホップリレー通信の実現を目指しているという。
Wi-Fi Directは、基本的には端末間を1対1で接続する技術である。バケツリレーのようにデータ転送を行うためには、データ受領後、接続を意図的に切断し、次の転送相手との接続を確立した後にデータ転送を行わなければならない。
そこで、DTNを用いて次の転送相手との接続を確立するまでの期間、一時的に端末内に情報を蓄積することで、バケツリレー式のデータ転送が実現できる。どのような相手と、どのようなタイミングで切断/接続を行えば、効率の良いリレー転送が行えるかを決定するアルゴリズムを、東北大学が開発した。
スマホdeリレーは、2013年から実証実験を開始している。2015年10月には、東北大学の総合防災訓練で活用。学生の多い川内キャンパス(仙台市青葉区)から災害対策本部が設置された片平キャンパス(同)までメール送信を行い、1時間以内にテキストメール675通と写真付きメール44枚の送信に成功したとしている。
しかし、実用化に向けた課題も大きい。スマホdeリレーは、宛先を指定する仕組みとなっているが、裏側ではアプリケーションをダウンロードしているスマホ全てに送られている。そのため、盗聴などのセキュリティ対策を要する利用用途においては、別途セキュリティ機能を付加する必要があるという。
また、緊急時のみでの使用は、ユーザーが使い方を分からないケースも考えられるため、日常的に使ってもらうようなアプリケーションを開発する必要がある。そのため、イベントやゲームなどを同技術を活用する入口としたり、シナジーのある既存アプリに同技術を組み込む形での展開も検討するとした。
説明員は、「技術的な部分はある程度確立されているため、今後は実用化に向けて、一般の人々を対象としたフィールドトライを進めていきたい。フィールドトライを共に行っていくパートナーも募集している」と語った。
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