MTJの自由層に求められるもの:福田昭のストレージ通信(35) 次世代メモリ、STT-MRAMの基礎(13)(2/2 ページ)
もっとも、コバルト鉄ホウ素合金(CoFeB)/酸化マグネシウム(MgO)の組み合わせは、弱点を抱えている。高い磁気異方性と高いMR比の両立が難しいことだ。加熱処理によって界面の酸素比率を最適化する条件と、加熱処理によって薄いCoFeB層の結晶品質を最適化する条件が一致しにくい。特に垂直磁気記録方式では、MR比を高めにくい。
このため、過去にMR比の最高記録を塗り替えた事例(研究成果)は、面内磁気記録方式であり、なおかつ、自由層が厚めのMTJとなっている。材料系もCoFeBではないことが多い。例えばMR比が600%を記録したMTJの材料系は、鉄/酸化マグネシウム/鉄である。
コバルト鉄ホウ素合金(CoFeB)/酸化マグネシウム(MgO)の組み合わせが抱える弱点。下のグラフは、室温におけるMR比の最高記録推移(クリックで拡大) 出典:CNRS
室温におけるMR比で600%を達成した鉄(Fe)/酸化マグネシウム(MgO)/鉄(Fe)構造の断面を電子顕微鏡で拡大撮影した写真(クリックで拡大) 出典:CNRS
(次回に続く)
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