モバイルブロードバンドの機能に焦点を当てた5Gの初期プロトタイプを発表したのはQualcommだけではない。
2016年6月16日、通信機器メーカーのEricssonは、プラグインソフトウェアに関する計画を明らかにした。Massive MIMOアンテナアレイ、MU-MIMOアンテナアレイ、レイテンシの削減、無線アクセスネットワークの仮想化、スマートルーティングという5領域で、5Gのようなサービスに適用するキャリアシステムをアップグレードするのが目的だという。
Ericssonの無線部門でポートフォリオマネジャーを務めるAntti Keintola氏は、電子メールで、同社は16以上の送信エレメントを備えたアンテナアレイの実地試験を2016年中に始める計画で、プラグインソフトウェアはその実施試験とは時期をずらして投入される予定であると述べた。Ericssonは既に日本、韓国、スウェーデン、米国の実地実験場に「5G Radio Test Bed」と「Radio Prototypes」を配備したが、下り回線スループットのピーク値が25Gビット/秒以上に達するケースもあるという。
既存のセルラーネットワークにおける一般的なレイテンシは20ミリ〜80ミリ秒だが、このプラグインソフトウェアを用いると、レイテンシをその半分に減らすことができる。コードはEricssonの既存システム上で作動するが、仮想化ソフトウェアは標準的なサーバ上でも作動する。
Keintola氏は「この技術で実現したアイデアの多くは、3GPP規格で実現が期待されたものをベースとしており、事業者が5Gネットワークや5G事業を展開し始められるよう設計されている」と述べた上で、「規格策定が進む中で、われわれは通信事業者が5Gを準備するために既存のネットワーク内に配備できる5G技術の要素を探索し続けていく」と付け加えた。
通信キャリアもチッププロバイダーやシステムプロバイダーと同様に、5Gで優勢に立つことを切望している。
韓国と日本のサービスプロバイダーは、2018〜2020年の主要イベントに向けた取り組みに関する計画を発表している。しかし、そのころにはまだ標準規格が策定されていないか、または辛うじて策定されたばかりというような状態ではないだろうか。
QualcommのCTO(最高技術責任者)であるMatt Grob氏は、以前の報道の中で、「このように素早い取り組みを見せるサービスプロバイダーたちの意欲は、称賛に値するといえる。ただし、5Gが国際標準規格として統一される時に、その一部として組み込まれていない可能性がある規格を採用するというリスクを冒していることになる」と指摘する。
業界全体でさまざまな技術課題に関する見解を一致させる方向へと進んでいく上で、Smee氏のように、その進捗を管理する役割を担う技術者たちは、私的な会合や3GPPミーティングだけでなく、5G関連の業界イベントにも平均月1回の頻度で参加しているという。
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