5G規格が実際に運用されるのは2018年以降になる見込みだが、3GPPは2016年6月22日に、「Cat NB1(Cat M2)」として知られている4G IoT規格の策定を完了させている。4G IoT規格は、200kHz帯域幅で最大データ伝送速度200Kビット/秒の実現を目標としているが、実際には平均40Kビット/秒となる見込みだ。
既存の10Mビット/秒の「Cat 1」と、2017年に発表予定の1Mビット/秒の「Cat M1(eMTC)」、Cat NB1は、音声やモビリティをサポートしない。セルラー規格の細分化により、超低消費電力かつ低コストのSigfoxやLoRaなどに対する競争力が高まっている。
Sequans CommunicationsやQualcommなどのメーカーは、「Cat 1やCat Mをターゲットとする既存の半導体チップのファームウェアアップグレードに対応した規格をサポートする予定だ」と主張する。通信事業者にとっては、新たな規格が登場すれば新しいハードウェアが必要になるため、新規格の採用は2018年初頭以降になるとみられる。半導体メーカーは、新規格によってどのような市場けん引要素がもたらされるのかを確認してから、低コストかつ低消費電力のCat NB1向けに最適化されたチップセットを提供するようだ。
Cat NB1は、2G、4Gスペクトルのいずれにも適用可能である。また、3GPPも以前に、3Gネットワーク向けのIoT規格として、「Extended Coverage GSM(EC-GSM-IoT)」を承認している。
サービスプロバイダーは、オンライン上で詳細が公開されている数々の規格の中から選択する。現在、世界各国の通信事業者たちが、さまざまな種類のセルラーIoT向け2G〜4G規格を採用している。
3GPPは、IoT規格を策定するための取り組みの一環として、数多くの規格を発表している。Sequans Communicationsでマーケティング担当バイスプレジデントを務めるCraig Miller氏は、「最終規格は、慎重を期して策定しているため、驚くような内容のものはない」と述べる。
新しいIoT規格はすべて、LTE Release 13の一部となる。Qualcommの広報担当者によると、最近行われた3GPP本会議の中で、Cat M1とCat NB1の機能を拡張するためのRelease 14のワークアイテム(Work Item)が承認されたという。セルラー業界団体によれば、20社を超えるネットワーク通信事業者が、Cat NB1の導入を決めているという。
既存のLTE Cat 1モジュールは、2Gモジュールと同程度の25米ドル程度で販売され、販売価格70〜100米ドルの完全認証モデムを置き換える。通信事業者は既に、M2M(Machine to Machine)ユーザーに対し、データの使用量に応じて、1カ月当たり1〜10米ドル以上と幅広い料金を課している。
2016年秋までにはCat M1モジュールの出荷が開始され、同年末にはネットワークも始動する見込みだ。また、間もなくCat M1チップのサンプル出荷が始まり、認証も行われる。Sequans CommunicationsのMillar氏は、「300〜400Kビット/秒の半二重伝送速度で、GPRSと同程度(2.5Gクラス)の性能を実現する見込みだ」と述べる。
Cat M1では、スリープモードが追加され、セルラーネットワークを1秒または2秒に1回確認する必要がない。このため、2GやCat 1ネットワークと比べて消費電力を大幅に低減することが可能だ。
Qualcommは、「当社は、既存のCat 4およびCat 1 LTEモデムで、60社以上のOEMメーカーから、100を超えるデザインウィンを獲得した。一部のIoTのエンドノードでは、Cat 1の省電力モードにより、2個の単3電池で最大10年間動作することが可能になる」と述べている。
【翻訳:滝本麻貴 、青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.