フランスの市場調査会社によると、今後のパワーエレクトロニクス市場をけん引するのは、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)だという。ただ、EVやHEVは補助金など政策も絡むことから、同市場の未来が明るいかどうかは、政治的な要素も関係してくる。
電気自動車(EV)およびハイブリッド自動車(HEV)は近い将来、パワーエレクトロニクス市場をけん引すると予想される。フランスの市場調査会社であるYole Développementは、電気自動車の黄金期の到来とともに、パワーエレクトロニクス市場が成長すると予測している。ハイブリッド車が顧客に受け入れられ、政府がハイブリッド車の補助金の交付を続けるのであれば、同社の予想通りになるだろう。
Yole Développementは、同社が発表したレポート「Status of The Power Electronics Industry 2016(2016年のパワーエレクトロニクス業界の状況)」の中で、EVおよびHEVのけん引力を説明している。同レポートは、ウエハーやインバーター、MOSFET、IGBTの各市場における2021年までの予測の他、業界再編についても言及している。
2015年は、パワーエレクトロニクス市場にとって受難の年だった。市場が縮小し、パワーデバイスやパワーモジュール、ディスクリート部品の世界市場規模が2014年の157億米ドルから3%減少し、152億米ドルに下落した。その主な要因は、IGBTモジュールの平均販売価格(ASP:Average Selling Price)の落ち込みにある。
2021年には、EVおよびHEV向けがIGBTモジュール市場のシェアを大きく占めると予想される。一方、パワーMOSFETはあらゆる用途に採用され、同市場の規模は2021年に12億米ドルに達する見通しだという。
Yole Développementでテクノロジー/市場アナリストを務めるCoralie Le Bret氏は、レポートの中で、「自動車業界などの値下げ要求を受け、IGBTモジュールのASPは今後も下落が続くと予想される。ただし、出荷数の増加がASPの下落を上回ると予想されることから、IGBTモジュール全体とパワーエレクトロニクス市場の規模は増加する見通しだ」と述べている。
同社のレポートは、「EV/HEV業界は2017年に、電力密度の増加に最も注力すると予想される。特に中電力および低コストアプリケーションでは将来的に、オーバーモールドのモジュールや、両面放熱構造を採用したモジュールが主流になる見込みだ」と予測している。また、レポートでは「モジュールの設計も進歩し、熱の管理を最適化するためのパッケージ層がなくなる可能性もある」としている。
Yole Développementのアナリストは、「EV/HEVの未来は、政治に大きく左右される」と指摘している。再生可能エネルギーや電気自動車、パワーエレクトロニクス市場は特に、政治の影響を受けやすいという。同社の予想によると、パワーエレクトロニクス市場は2030年までに270億米ドルに達するという。ただし、「政治的な見通しを視野に入れた場合は、同市場の展望はそれほど明るくはない」とも述べている。
同社のアナリストはこの他、「ワイドバンドギャップ技術が、広く普及する」と予想している。ワイドギャップバンド半導体を採用した製品は多くの企業から提供されている他、さまざまな研究開発プロジェクトが行われている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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