PCIM Asiaに出展していたIGBTデバイス/モジュールメーカーを幾つか紹介する。Jiangsu CAS-IGBT Technologyは、IGBTデバイスとモジュールの開発と製造を手掛けている。太陽光や風力などの再生エネルギーや産業機器の市場を主なターゲットとしている。Hangzhou Silan Microelectronicsは、IGBT、スーパージャンクションMOSFET、フリーホイールダイオードなどパワーエレクトロニクス向けのデバイスからアナログICやミックスドシグナルICの開発も手掛けるメーカーだ。同社は高電力、高電圧、高周波向けを中心に製品を展開している。


Jiangsu CAS-IGBT Technologyの8インチIGBTウエハー(左)と、同社のIGBTモジュール(中央)。右はHangzhou Silan MicroelectronicsのIGBTモジュール製品群(クリックで拡大)中国のIGBTデバイス市場でシェアを伸ばしているのがInfineon Technologiesだ。同社の中国法人であるInfineon Technologies Chinaは、PCIM Asia 2016で、「PCIM Europe 2016」(2016年5月10〜12日)で初めて展示したSiC-MOSFETの他、同社の最新となる第5世代IGBTや、新しいパッケージ「XHP(FleXible High-Power Platform)」などを展示した。Infineon Technologies ChinaでSolution Development Managerを務めるXin Hao氏は、XHPの特長として、内部構造の工夫によりインダクタンスを低減できる点や、何個でも並列に接続できるので電流容量を増やせる点を挙げた。
なお、Hangzhou Firstack Technologyは、このXHPを8個並列したモジュール群向けのゲートドライバICをPCIM Asiaで展示していた。Hangzhou Firstack Technologyは、同社のゲートドライバICと、他社から購入したIGBTモジュールを統合したボードなどを提供している。

左=Infineon Technologiesの「XHP(FleXible High-Power Platform)」/右=XHPを8個並列接続したものとゲートドライバICを組み合わせた、Hangzhou Firstack Technologyのボード(クリックで拡大)PCIM Europe 2016では、SiCやGaNを利用する次世代パワーデバイスの展示が至る所で見られた。一方でPCIM Asiaでは、こうした次世代パワーデバイスの展示は少なかった。中国の最大手鉄道車両メーカーCRRC(中国中車)のグループ会社で、鉄道向けのトラクションモーターやIGBTモジュールを手掛けるCRRC Yongji Electricは、「高速鉄道向けなどでSiCに対する関心は高いものの、まだコストが高いという印象が強い」と述べる。三菱電機の中国法人も、「中国の関連メーカーも関心は持っていて、移行のタイミングなどについて聞かれることは多い。ただ、コストと性能のバランスを考慮すると大々的に採用するまでには至らないようだ」と、同様の見解を示している。
Lorenz氏は、「SiCやGaNパワーエレクトロニクスの分野では、欧州でさえ、十分な利益を出せる状況にはなっていない」と、次世代パワーエレクトロニクス市場全体に対する印象を述べている。
Lorenz氏は中国のパワーエレクトロニクス市場について、「パワーデバイスで、中国が欧米や日本に技術的に追い付くには、まだ時間がかかるだろう。だが、武漢大学など優れた研究開発を行っている大学が幾つかあり、猛スピードで追い上げている。エンジニアたちは、日米欧に追い付こうと必死だ」と語り、5年後、10年後には、世界のパワーエレクトロニクス市場の勢力図はどうなっているか分からない、と続けた。
〔取材協力:Mesago PCIM〕
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