広島大学、昭和電工らの共同研究チームは、アンモニアから燃料電池自動車向け高純度水素を製造する技術の開発に成功した。アンモニアを原料とする燃料電池自動車向け水素ステーションの実用化に大きく近づいた。
広島大学と昭和電工、産業技術総合研究所、豊田自動織機、大陽日酸は2016年7月、共同研究により、アンモニアから燃料電池自動車向け高純度水素を製造する技術の開発に成功したと発表した。実証システムの10分の1(1/10)スケールで、アンモニア分解反応から残存アンモニア除去まで、一気通貫で実証実験を成功させたのは世界で初めてと主張する。アンモニアを原料とする燃料電池自動車向け水素ステーション(アンモニア水素ステーション)の実用化に大きく近づいた。
広島大学先進機能物質研究センターの小島由継教授を中心とするアンモニア水素ステーションチームは、アンモニア(NH3)から水素燃料を製造するための、「アンモニア分解・高純度水素供給システム」を開発している。このシステムは、主にアンモニア分解装置、アンモニア除去装置及び水素精製装置で構成されている。
ただ、アンモニア水素ステーションを実用化するためには、「高活性高耐久性のアンモニア分解触媒」や「残存アンモニア濃度を0.1ppm以下としつつ、再生が容易なアンモニア除去材料」「水素純度99.97%を実現する精製技術」などの開発が不可欠といわれてきた。
共同研究チームは今回、アンモニア分解用ルテニウム系触媒の調製、アンモニア除去材料の作製及び水素精製技術を確立することに成功した。開発した技術を用いてアンモニア分解装置、残存アンモニア除去装置及び水素精製装置を開発し、実証システムを1/10スケールで実現した。これらの装置を組み合わせることで、アンモニアを原料とした燃料電池自動車向け水素燃料の製造が可能になるという。
具体的には、産業技術総合研究所触媒化学融合研究センターが、550℃以下でアンモニアを化学平衡濃度(理論値)まで分解できるルテニウム系触媒(Ru/MgO)を開発した。従来の触媒だと、残存アンモニア濃度が約70000ppmと高かったが、新たに開発したルテニウム系触媒だと、1000ppm以下まで分解できることが分かった。
昭和電工と豊田自動織機は、新たな触媒を用いるアンモニア分解装置を開発し、1/10スケールで実証システムを実現した。この装置を用いてアンモニアガスを毎時1Nm3の流量で供給すると、550℃でアンモニア濃度1000ppm以下の分解ガス(水素75%、窒素25%)を、毎時2Nm3の流量で得ることができたという。
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