東陽テクニカは、「イノベーション・ジャパン2016」(2016年8月25〜26日)で、「サブナノ結晶配向情報検出ウエハーマッピング装置」の開発成果を展示した。SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)ウエハー基板の量産化に貢献する品質・信頼性評価技術として期待される。
東陽テクニカは、2016年8月25〜26日に東京ビッグサイトで開催されている「イノベーション・ジャパン2016」で、関西学院大学と共同で開発している「サブナノ結晶配向情報検出ウエハーマッピング装置」の開発成果を展示した。
同装置は、次世代パワー半導体材料として期待されているSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)のウエハー基板上の結晶欠陥や歪みの結晶配向情報をサブナノオーダーで高精度に検出する。SiCやGaNは、デバイスを作るベースとなるエピタキシャルウエハー基板の高品質化に課題が残されており、量産化が進んでないのが現状だ。
その中で、トヨタ自動車がSiCパワー半導体を搭載した車両を2020年までに実用化を目指すと発表しており、東陽テクニカ第2技術部第2課の次長である岡本学氏は、「SiCウエハー基板の量産化に貢献する品質・信頼性評価技術が求められている」と語る。
東陽テクニカは、関西学院大学の教授である金子忠昭氏らが開発したSiCウエハーの超高音熱化学エッチング法と走査電子顕微鏡(SEM)をベースにした転位欠陥解析技術に着目した。同技術では、関西学院大学が開発した理想結晶表面を持つSiCウエハーを標準試料として活用。ビーム平行性が優れ、試料バイアスフリーの低加速観察が可能なSEMで得られたSEM信号量を、標準試料で得られた信号量と対応させることで、SiC表面の1分子層(0.25nm)厚みごとの結晶配向情報を高精度に検出するという。
また、ウエハー欠陥検査装置で検出した転位欠陥をSEMの座標と同期させる座標リンケージ機能、ウエハー領域前面の高速広域マッピング機能も開発。OM(光学顕微鏡)、PL(フォトルミネッセンス)、SEMの同点観察を可能にした。つまり、同装置によって、ワイドギャップ半導体表面の欠陥や転位を明確に可視化し、標準サンプルを用いて、理想的な表面と比較できるようになるという。
岡本氏によると、同装置は2018年以降にSiCウエハー基板の品質自動評価装置として製品化予定。製品化までには、「評価の自動化を簡便にしたり、OMやPL装置との連携部分を改善したりすることで、装置の使いやすさを高めていく」(岡本氏)と語る。
なお、今回の開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の、「中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業」(2017年2月まで)として採択されている。
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