IBMが、米国で開催された「Hot Chips 28」で最新プロセッサ「POWER9」の概要を発表した。ハイエンドサーバ市場で最大のライバルであるIntelに対抗する。
IBMは、米国カリフォルニア州クパチーノで開催されたマイクロプロセッサの国際学会「Hot Chips 28」(2016年8月21〜23日)で、最新プロセッサ「POWER9」を初披露した。IBMは、POWER9のOEMやアクセラレータパートナーを募り、ハイエンドサーバ市場において最大のライバルであるIntelに対抗する構えだ。
POWER9は、14nmプロセスを適用する。同チップは2016年3月に初めて発表された。POWER9は、IBMのPOWERチップとしては初めて、システム設計のスケールアップとスケールアウトに対応可能になっている。
POWER9は、IBMのこれまでのマイクロプロセッサと同様に、新たな性能レベルを実現するために膨大なメモリを搭載している。その一例が、120MバイトものeDRAMだ。オンチップのキャッシュ階層の帯域は7Tビット/秒に上る。
POWER9の主任設計者であるBrian Thompto氏は、「POWER9は2017年後半に発売予定で、『POWER8』の2倍以上の性能を実現する」と述べている。新コアとチップレベルの設計によって、大幅な性能向上が期待される。
POWER9には、CPUコアの構成とメモリインタフェースの違いによって計4種類が用意されている。
CPUコアの構成は、1つは、1コア当たり8スレッド、1チップに12コアを搭載し、IBMのPOWER仮想環境に対応した構成。もう1つは、1コア当たり4スレッド、1チップに24コアを搭載し、Linuxに対応した構成になっている。
それぞれ、2ソケットサーバ向けで、最大8個のDDR4ポートに対応できるバージョン(スケールアウト)と、マルチソケット向けで、Buffered DIMMに対応するバージョン(スケールアップ)がある。
こうした多彩な選択肢は機器メーカーにとって魅力的だ。IBMは、同社が設立した「OpenPOWER Foundation」を通して、POWERシステムの普及や促進を目指している。OpenPOWERの加盟企業は現在、200社を超えている。これまでのところ中国からの関心が最も高く、中国のパートナー企業1社がPOWERプロセッサを独自製造している。
DDR4 DIMMに対応したことで、汎用的なパッケージが使えるようになり、低コスト化につながることも機器メーカーにとってはメリットになる。
POWER9には、PCI Express(PCIe) 4.0が実装される。POWER9は、策定の完了が待たれる同規格を初めて実装するプロセッサの1つとなる。さらにPOWER9は、25GHzの転送速度を持つ「BlueLink」を備える。PCIeリンクは、IBMのCAPI(Coherent Accelerator Processor Interface) 2.0でFPGAとASICを接続できる。また、BlueLinkは、NVIDIAの新チップ間インターコネクト技術「NVLink 2.0」に対応する。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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