というわけで、せっかくの機会ですから、約30人の方から既にいただいている「皆さんのご意見」の全文を公開することにしました。これがとても面白く、しかも勉強になるのです。今回は、アンケートでいただいたご意見について、私のコメントも記載させていただきたいと思います。
⇒アンケート結果はこちらです。
この質問については、ほとんどの方から賛成の旨のご意見をいただきました。また、低コストのホームドアの設置や、ドアの部分だけ開きっ放しにした壁を作るだけでも十分効果があるのではないか、という提案もありました。
江端のハートにヒットした意見としては、以下のようなものがありました。
・ホームドアがついている鉄道会社を選択するというモチベーションは働かないかもしれない
→ そりゃそうですね。しょせん、私たちは、自宅から近い駅の鉄道会社を選ばざるを得ませんから。
・ホームドアであっても明確な意思を持った自殺はどうやっても防げないと思うので、「諦める」ことも必要である
→ 私も最近、そのように考え始めています。鉄道を使った自殺を組み込んだ公共交通システムの設計や、そのような「自殺被害」への私たちのマインドセットが必要だと思うようになりつつあります。
・自殺した人(死体)の処理をもっと素早く片付けられるように駅を改造した方がよい
→ これ、なかなかいい線ついています。イメージできていないんですが「ゴキブリホイホイ」のような手軽さと低コストで死体を自動的に処理できる駅という研究は提案価値があると思います。
・自殺したい人が、自殺ができる施設をつくって、そっちに行ってもらう
→ うん、究極の解決策ですね。誰もが思っていても言いにくかった「自殺支援センター」への言及、いただきました。これを始めるには、まず、刑法第202条(自殺教唆・幇助罪)の改正が必要になりそうです。
⇒アンケート結果はこちらです。
この質問についても、ほとんどの方から賛成の旨のご意見をいただきました。
特にコストに関しては、「ホームドアによる人件費削減を試算できないか」「クラウドファンディングは使えないか」などの、前向きな製造コスト対応に対するご意見をいただいております。
しかし、私のハートに最もヒットしたのは、
・前回の江端のコストベースの考え方は、エンジニア(というか製造業者)の倫理問題と類似していないだろうか
というご指摘でした。
例えば、自動車メーカーのフォードは、「ピント」という自動車に重大な欠陥がある(追突事故に対して非常に脆弱である)ことを知りながら、欠陥対策に掛かるコストと事故発生時に支払う賠償金額とを比較し、賠償金を支払う方が安価であると判断し、そのまま放置しました(結果的に、裁判で懲罰的罰金(1億米ドル)を命じられた)。
また、タバコメーカーのフィリップモリスは、チェコ共和国の喫煙による医療費増加に対して、「喫煙者が生きている間は国家予算の医療費負担が増えるものの、喫煙者は早死にするため、政府は医療費、年金、高齢者向け住宅などに掛かる費用を、(年間150億円程度)節約できる」という、費用便益分析についてのカウンタープロポーザルをチェコ政府に提出しています。
もちろん、上記の事例が、前回の私の「ホームドア設置プロセスの仮説」と完全に一致する訳ではありませんが、大変考えさせられるご意見でした。
しかし、このアンケートで、一番、江端のハートにクリーンヒットしたご意見は、
・ホームドアの設置よりも、トイレをもっときれいにしてほしいと思う駅がたくさんある
だったことを、ご報告しておきたいと思います。
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