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ソニー製チップの採用でFD-SOIへの関心高まる?Huamiのスマートウォッチ(3/4 ページ)

» 2016年10月06日 15時30分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

中国市場に与えたインパクト

 Boudre氏は、Huamiのスマートウォッチが、GPSをオンにしていても、競合品に比べて約2.5倍の電池寿命を実現していることに言及し、ソニーのチップが、性能、消費電力、コストにおいてFD-SOIプロセスの利点が生きていると述べた。

 Huamiのスマートウォッチは、現在のところ、FD-SOIチップを採用した唯一の民生品である。だが、IoT機器やモバイル機器を開発する中国のスタートアップの競争心に火をつけるという意味で、重要な一歩になると、Boudre氏は考えている。こうしたメーカーがFD-SOIチップの採用も視野に入れる可能性が出てきたからだ。

 実際、中国のファブレスチップメーカーらは、FD-SOIプロセスを採用するチップ設計に興味を持ち始めている。Boudre氏は「今後12カ月〜18カ月の間に、FD-SOIプロセスで製造されたチップを採用した最終製品が中国で登場する可能性が高い」と予測している。

Huamiのスマートウォッチを身に着けるSoitecのCEO、Paul Boudre氏

 現在では、Samsung Electronics(サムスン電子)とGLOBALFOUNDRIESが、それぞれ28nm FD-SOIと22nm FD-SOIの開発を加速させている。

 Boudre氏は、「FD-SOI分野では、中国が非常に重要な役割を担っている。しかし、GLOBALFOUNDRIESが現在、FD-SOI製造施設において50ものプロジェクトに取り組んでいることから、今や半導体業界の全てのチップメーカーが、FD-SOIに関わりを持っていることになる」と指摘する。

 GLOBALFOUNDRIESは、間もなく製造開始予定のFD-SOIプラットフォーム「22FDX」の後継技術となる次世代FD-SOI「12FDX」を、2016年9月に発表したばかりだ。

 12FDXは、10nm FinFETと同程度の性能を提供しながら、16nm FinFETよりも優れた省電力化と低コスト化を実現する。GLOBALFOUNDRIESは2019年前半に、顧客企業向けに12FDXのテープアウトを実現できる見込みだとしている。

 GLOBALFOUNDRIESがドイツのドレスデンに保有するウエハー工場で、ゼネラルマネジャーを務めるRutger Wijburg氏は、「12FDXプロセスは、さらなる性能向上を実現し、トリプル/クアッドパターニングやEUV(極端紫外線)リソグラフィを不要にすることができる」と主張する。

 Boudre氏が指摘しているように、極めて性能の高いFinFETトランジスタが求められる特定の用途もあるが、ほとんどのコネクテッドデバイスに求められているのは、高いレベルのRFインテグレーションや柔軟性、超低消費電力を、FinFETでは不可能な低コストで実現することである。

 EE TimesはBoudre氏に対し、Mobileyeの最近の動きについてどう見るかを聞いた。Mobileyeは、これまで長期にわたり、ビジョン向けSoC(System on Chip)「EyeQ」シリーズの全ての製造をSTMicroelectronicsのFD-SOIプロセスに依存してきたにもかかわらず、つい最近、2018年に発表予定の「EyeQ 5」チップに、FinFETを採用するという判断を下している。

 これについて同氏は、「簡単な話だ。Mobileyeが2015年に、どのプロセス技術を採用するのかを決定する際に、FD-SOIでは12nmプロセス技術を適用できなかったため、別の技術を採用せざるを得なかったというだけのことだ」と述べ、「このことからも、ロードマップの重要性がよく分かるのではないだろうか」と強調した。

 Boudre氏は、「CEA-Leti(フランス原子力庁の電子情報技術研究所)は、FD-SOI技術に関する長期ロードマップを作成しており、現在7nm FD-SOI技術に関するモデリングデータも作成している」と述べた。

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