ルネサス エレクトロニクスは、車載ソフトウェア開発環境「R-Carスターターキット」などを発表した。大規模化、複雑化する車載ソフトウェアに対して、「プロフェッショナルコミュニティー」による新たな開発体制を提案する。スターターキットは、こうしたエンジニア集団に向けて開発した。
ルネサス エレクトロニクスは2016年10月19日、東京都内で新製品説明会を開催し、車載ソフトウェア開発環境「R-Carスターターキット」などを発表した。同社は、大規模化・複雑化する車載ソフトウェアに対して、「プロフェッショナルコミュニティー」による新たな開発体制を提案。新製品のスターターキットは、こうしたエンジニア集団に向けて開発した。
自動車業界は、安全性のさらなる向上やクルマのIT化など、新たな時代を迎えている。その1つが「自動運転」を実現するための技術開発である。2020年には高級車に実装されるソフトウェア行数が3億行に達するとみられ、その規模は2000年に比べて約300倍に急増すると推定されている。2010年でも高級車に実装されるソフトウェア行数は1億行といわれ、スマートフォンの1200万行に比べても約8倍の規模になる。また、高いセンシング能力や認知/判断と制御機能の連動、機能安全/セキュリティの確保などが求められている。
同社の執行役員常務で第一ソリューション事業本部長を兼務する大村隆司氏は、「自動運転時代のソフトウェア開発は、自動車メーカーやTier1サプライヤーのみで対応するには限界がある。今後は大規模なソフトウェアを効率よく開発していくために、プロフェッショナルコミュニティーが重要な役割を担う」と話す。プロフェッショナルコミュニティーとは、画像認識やHMI(Human Machine Interface)など、ソフトウェア開発に高い専門知識を持ち、オープンなソフトウェアを積極的に活用するエンジニア集団を指す。
この技術集団には、アルゴリズムを研究している大学や研究機関の技術者、あるいは自動車業界以外の技術者なども含まれるという。「一般的に自動車業界への事業参入は障壁が高いといわれている。そこで当社は、スターターキットを用意し、多くの技術者が参入しやすい環境を提供していく」(大村氏)と、新製品開発および「R-Carコンソーシアム」活動の狙いを語る。スターターキットを用いると、独自のアイデアにとどまらず、それをプロトタイプに落とし込んで、自動車メーカーに提案することが容易にできるという。
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