新たに開発したR-Carスターターキットは、第3世代の製品となる。今回は2種類の製品を用意した。新たに開発したSoC「R-Car M3」を搭載したモデル「R-Carスターターキット Pro」と、既に出荷中のハイエンドSoC「R-Car H3」を搭載したモデル「R-Carスターターキット Premier」である。参考価格(税別)は、R-Carスターターキット Proが約5万円、R-Carスターターキット Premierが約8万円。2016年11月より順次販売を始める。これらのキットは、ルネサス販社や特約店の他、Avnet(アヴネット)、マルツエレックなどから購入することができる。
R-Car M3は、世界戦略を狙うミディアムクラスの車載システムをターゲットに設計したSoCである。R-Car H3とはソフトウェアの互換性を有する。なお、R-Car M3は単体チップの他、DDRメモリを実装したSiPモジュールも用意しており、システム設計者は設計工数の低減が可能となる。
また、「Automotive Grade Linux(AGL)」や「GENIVI」などオープンソースコミュニティーで標準化が進む車載Linuxプラットフォーム、車載システムに最適化された「QNX」など、車載OS環境を利用することができる。さらに、「Wayland」や「OpenCL」などのHMIソフトウェア、コグニティブコンピューティングを支援するライブラリーなどを提供する。
自動運転システムの開発を加速する「高度自動運転(HAD:Highly Automated Driving)ソリューションキット」も同時に発表した。2017年2月より販売を始める。価格は未定。
HADソリューションキットは、「R-Carスターターキット Premier」を2セットと、シャシー制御用マイコン「RH850/P1H-C」を搭載している。スターターキットとマイコンはイーサネットスイッチで接続されている。ソリューションキットは、放熱対策を施し、各種インタフェースなども備え、堅牢なケースに収納されている。このため、実車に搭載して研究開発や評価を行うことができるという。
R-Carスターターキット Premierには、「ARM Cortex-A57/A53コア」を採用したR-Car H3を搭載した。処理性能は4万DMIPS以上を達成している。また、グラフィックスコアとして「PowerVR GX6650」を、画像処理やディープラーニング処理などを行うために独自の並列プログラマブルコア「IMP-X5」などを内蔵している。
この他、5×100MビットのイーサネットBroadR-Reachポート、1Gビットのイーサネット、「CAN-FD」「FlexRay」などのインタフェース機能、ミリ波レーダー、レーザーレーダー、超音波センサーなどの入力機能、最大16チャネル分のカメラ入力機能などを備えている。
なお、当日は隣接する会場で、「R-Carコンソーシアム・フォーラム2016」を開催した。現在は同コンソーシアムに187社のパートナー企業が参加している。フォーラム会場では、R-Car H3を用いたディープラーニングの実演デモやHADソリューションキットの展示、R-Carスターターキットを用いたパートナー企業によるアプリケーション事例などが紹介された。
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