Intelの新型SoC「Atom E3900」は、IoTエンドノードからのレベルアップを狙い、ネットワークエッジのFC(Fog Computing)分野をターゲットに定める。この14nmプロセスチップは、Intelの従来型の設計を採用し、消費電力が6.5〜12Wの製品シリーズをそろえる。
またAtom E3900は、2〜4個のx86コアを搭載し、動作周波数が1.8〜2GHz、ピーク処理性能は1万8972〜4万2160DMIPS(Dhrystone MIPS)を達成。Gen9 Goldmont グラフィックスコアを12〜18個搭載し、106〜187GFLOPSの性能を実現するという。
E3900のハイエンド品は、60フレーム/秒で4Kビデオに対応し、3つのグラフィックスパイプラインで3つのディスプレイをサポートする。またE3900は、産業オートメーション用途向けに開発キットを提供し、OpenCL規格やOpenVX規格に準拠したコンピュータビジョンのカーネルやライブラリをサポートするという。
またIntelは、チップ上でプログラム可能な高性能イメージングブロック向けにも開発キットを提供する。監視カメラ市場でのデザインウィンを狙う考えだ。IntelのIoTグループにとって、開発者向けツールは、バーチャル市場における新たな注力分野の1つとなる。
IntelのIoTグループのAtom/Core/Xeon製品担当責任者であり、プラットフォームエンジニアリング担当ゼネラルマネージャを務めるKen Caviasca氏は、「垂直市場のニーズに焦点を絞り、さまざまなユースケースを分析して、シリコンとソフトウェアの両方の要件に割り当てていくという作業に多大な時間を費やした」と述べている。
Caviasca氏は、「こうした手法は、10〜20年前とは全く異なっている。当時は、チップレベルの要件を収集することが重要とされ、ネットワークエッジからクラウドまでのニーズについて検討したり最適化するには至らなかったためだ」と述べる。同氏は、1980年代にIntelに入社し、車載/産業用コントローラーの開発に携わってきた人物だ。
E3900の最も重要な新機能は、「Time Coordinated Computing(TTC)」技術だ。ネットワーク全体を、わずか1ミリ秒のレイテンシで動作させることが可能なため、Ethernet AVB(IEEE802. 1 Audio/Video Bridging)規格に対応したPLC(プログラマブルロジックコントローラー)や車載インフォテインメントシステムなどで使用することができるという。
Intelが、このレベルのリアルタイム機能をLinuxやリアルタイムOS(RTOS)でサポートするのは、今回が初めてとなる。このため、Atom I/Oファブリックやメモリサブシステム、キャッシュQoSアルゴリズムなどを変更する必要があった。これらの機能向けの開発キットはまだ存在しないが、現在開発を進めているという。
E3900は現在、最大動作温度85℃の製品シリーズの出荷を開始しており、2017年初頭には製造を開始する見込みだ。最大動作温度110℃の車載向け製品については、2017年6月までに提供できる予定だとする。
現在、E3900をサポートする企業は約29社で、その多くは、自動車/産業市場におけるIntelの既存のパートナー企業だという。Caviasca氏は、「当社の既存のAtom製品の中では、最大規模の早期アクセスプログラムだ」と述べている。
【翻訳:田中留美、青山麻由子、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.