Intelは、米国カリフォルニア州クパチーノで2016年8月に開催されたマイクロプロセッサの国際学会「Hot Chips 28」において、Quark MCUの詳細を初めて明らかにした。しかしそれ以降、Quark開発を担当するIoTグループの経営幹部は、再三にわたるインタビューの依頼を全て拒んできた。
Intelの組み込みグループに25年間携わった実績を持つPeter Barry氏は、Hot Chips 28において、Quarkシリーズ初となる32ビット品「D2000」について説明した。このD2000は、アクティブモード時の消費電力量がわずか35mWで、スリープモード時が10mW、動作周波数は4〜32MHzだ。TSMCが180nmプロセスを適用して製造するという。
Barry氏は、「フラッシュメモリとSRAMをどの程度統合するのかを判断してプロセスを決定し、その選択されたプロセスに応じてアーキテクチャが決まる」と述べる。プロセス技術が高度になるほど、漏れ電流が大きくなるため、より優れた電力管理技術が必要となる。
D2000は、33MHzの「Intel 486」プロセッサと同程度の性能を備える。販売価格が50米セント程度のものもあるため、平均販売価格は約1.25米ドルだ。Barry氏は、「当社は、ハイエンドCPUのメーカーとして認識されているが、コンピューティングに対しても、あらゆる方向から柔軟に対応している」と述べる。
D2000は現在、Wind RiverのOS「Zephyr」を搭載する。IntelのPentium向け命令セットを一部使用することにより、x86コンパイラ/デバッガのツールチェーンとの互換性を確保しているという。IoTをターゲットに定めているため、既存のx86アプリケーションとのバイナリ互換性についてはほとんど考慮されていない。
開発者たちは今回、命令セットと、ターゲットとするダイ面積のどちらを選択すべきかに悩み、時間を費やしたという。Barry氏は、「Intelのような企業の命令セットアーキテクチャは、かなり長い対話を要するためだ」と冗談交じりに語った。
また同氏は、「将来的には、QuarkをMCUから拡張していく考えだ。コアやSoCでさまざまな実装オプションを提供することにより、Linux向けAtom X1000に次ぐ位置付けの製品にしていきたい」と述べている。
「さらに、高度なアーキテクチャを備え、統合無線などのアナログIP搭載や、55nmプロセス技術の適用などの実現を目指していく」(同氏)
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