では、Siemensはあらゆるツールをそろえたワンストップショップを目指すのだろうか。
Grindstaff氏はこの問いに対し、「そうではない。買収の背景にある意図を理解してもらいたい。多くの顧客は既に、特定の分野で愛用するツールを持っている。Siemensは、それらのツールを融合、調和させてモジュール方式で利用できるようにしたいと考えている。顧客が、当社の製品と他社の製品を簡単に組み合わせて利用できるようにすることが目標だ」と答えた。
MentorのRhines氏は、Grindstaff氏に同意し、「この取引の目的は、Siemens PLM SoftwareとMentorのプラットフォームを構築することだ。同プラットフォームによって顧客は製品の設計と製造をより簡単に行えるようになる」と述べている。
Mentorは他のEDAツール企業と比べると、ハードウェアや組み込みソフトウェアを含めたシステムソリューションにおいて歴史的な強みがある。Rhines氏は、「Mentorの売上高の50%は、防衛、航空宇宙、車載分野のシステム企業からの売り上げが占めている。これらの企業とは1980年代から取引を行っていて、当社の中核ビジネスはこうした得意客に支えられている」と述べている。
Mentorの現在の事業を詳細に見ると、売上高の60〜65%がIC設計ツールで、PCB(プリント配線板)やワイヤハーネスソフトウェア、組み込みソフトウェアなどのシステム製品が35〜40%を占めている。
Mentorのシステム設計の顧客の中には、同社のIC設計ツールも購入している企業もある。
車載分野も、Mentorの柱となる事業の1つだ。Rhines氏によると、車載分野は同社の売上高の15〜20%を占め、25%の平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)を維持しているという。
車載分野はSiemens PLM Softwareにとっても成長エンジンである。Grindstaff氏によると、同社の売上高の27%を占めるという。
車載分野の顧客は、ハードウェア(PCBやICを含む)の設計から組み込みソフトウェアのプログラミングやシステム解析まで、あらゆることを必要としている。自動車メーカーやティア1サプライヤー、半導体メーカー各社は、インフォテインメントやADAS(先進運転支援システム)、自動運転車向けソリューションの獲得に奔走している。Mentorにとってこうした状況は、車載事業を下支えするものとなっている。
Siemens PLM SoftwareのCAD/CAMとの連携や接続性も極めて重要なものとなるだろう。
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